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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百三十七話 「闘破連鎖」 Chain Break

 ルイが床を踏みしめた瞬間、大地が破砕音と共に跳ね上がる。

 一歩。その一歩で、階層ごと崩壊した。


「来たか」

 背中から滑り出るように現れたのは、淡く発光する二枚の翼。

 光の羽根が振動し、重力そのものを拒絶するように空を裂く。


 次の瞬間、十尾晴明が尾を引きながら笑った。

「ちょっと荒っぽうなりますけど――モンスターハウス、作り方解析してはります」


 尾の先端が地を滑り、魔力の波が階層全体を包む。

 床が盛り上がり、壁が蠢き、千体超の魔物が一斉に湧き上がった。


 十尾晴明の尾が地に深く突き刺さると、そこから新たな巣が生成される。

 空間の密度が変わり、空気が軋む。

「ほな、これにて――おいとまさしてもらいますわ」


 空間が爆ぜる。

 瞬間、足元から地層が崩れ落ち、深層が姿を現した。

 落下する瓦礫は帯電し、爆風と雷鳴が複数層を破壊していく。


 そこに、液状の影がするりと滑り込む。


「ええスキルやなあ、全部いただくで」


 芦屋神祖のスライム体が一気に広がり、雑魚モンスターを丸呑みにする。

 一度取り込まれた敵は、体内で分解され、魔力情報として再構成される。


「火炎、冷気、鋼体、毒耐性、反射膜、追加効果……ごっつええ感じや」


 スライムが再び分裂し、ダンジョン全体を覆い尽くす勢いで増殖。

 流動体の中で、魔物たちが無音で溶けていく。


 跳ねる影が斜め上から割り込んできた。


「たっのし~~~テヘペロォ!」


 南無三が三段ジャンプからの跳躍頭突きで中型モンスターを頭ごと圧縮粉砕。

 そのまま空中回転しながら後方に爪を突き立て、敵を引き裂く。

 飛び散る肉片を滑り台にして、地を滑走。三体の敵を膝で同時に砕く。


「爆発して!! 楽しませてぇ!!」


 叫びながら回転蹴り。地面ごと敵を巻き込んで水平断裂。

 敵が爆発四散し、その煙の中をさらに跳躍する。


「ボクがやっつけるんだもん!!」


 一つ目小僧が叫び、巨大な目がきらりと輝く。

 光線ビームが直線的に放たれ、敵の群れを串刺しにして爆発。

「もういっちょだもん!」


 今度はスパイラル軌道の光線。

 敵の背後を回り込むように発射され、包囲された味方を避けつつ背後から爆砕。

「ぜんぶぜんぶ壊すんだもん!」


 広範囲拡散レーザーが放たれ、階層ごと斜めに切り落とすような閃光が走る。

 天井が燃え、地面が白く溶ける。


 風が逆流し、魔力の流れがひときわ強くなる。


 ルイの翼が震えた。

 背中にあるのは二枚の翼――だが、魔道書がその動きを止める。


「これは……」


 懐から取り出した魔道書が、勝手にページを開いた。

 古い術式が空間に浮かび上がり、ルイの瞳が紅く染まる。


「父の術式……懐かしい」


 魔力が閃き、二枚の翼が裂けて分かたれる。


 六翼、展開。


 刹那、周囲の重力が反転したように感じられる。

 翼が回転しながら空気を切り裂き、地形ごと敵を斬り裂いた。


「……もう止まらない」


 そのまま突進。斬撃・突進・跳躍・反転・落下――すべてを六翼が最適化して斬撃運動に転換。

 敵は触れる間もなく、斬られ、砕かれ、魔力とともに蒸発する。


 一つ目小僧が口を尖らせる。


「ルイくん強すぎるんだもん……でも、ボクも負けないんだもん!!」


 超高速チャージ。

 眼球の奥が光り輝き、収束ビームの集中射が一点収束→一点突破→五重爆発へと昇華する。


 芦屋神祖のスライムが増殖し、階層の壁を喰い尽くす。

 取り込んだ魔物の数は一万体を超え、体内で構築された魔術方陣がすでに百を超えていた。


「うちのスライム、もう神経網持ってるんちゃうか……」


 十尾晴明の尾が回転しながら次の層へと回転掘削を始める。

 その背後から南無三が、爆発の柱を背負って飛び出してきた。


「うひょーーっ☆ 爆発のスープできあがり~~!!」


 頭突き→スライディング→爪ジャンプ→踵落とし→吠えながら回転。

 そのすべてが殺意のパフォーマンス。

 残骸の山が築かれるたびに、敵の再出現数が追いつかない。


 六翼の斬撃が再び舞う。

 斬る。突く。裂く。穿つ。散らす。貫く。


 ルイの身体は光の旋律となり、戦場を支配する。

 翼が振るうたびに、魔力が次層を呼び覚まし、ダンジョンはさらに深くへ――


 崩れ落ちる空間の中、彼らは止まらない。

 破壊は連鎖し、連鎖は加速し、加速はさらなる闘争を引き寄せる。


 闘破連鎖は、まだ終わらない。

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