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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百三十二話 「深淵奏界」 Symphony of the Abyss

 冥界に亀裂が走る。

 禍々しく脈動する裂け目の中心、浮かぶのは――**神核**。

 その一点に視線を注ぐのは、神も魔も死も等しく“飢えた者たち”。


 サタンが吼え、ベルゼバブが羽音を響かせ、マモンは地獄の門を広げて亡者を蠢かせる。

 月詠とカーリーは無言で、殺意の刃を振るい、ハデスは静かに世界の終焉を整えつつある。


「まだ足りない」

 メフィストが魔道書を広げると、そこから**深淵に在る3柱**が舞い降りた。


 * **戦域を律する将軍**、グラシャラボラス

 * **理を欺く悪魔**、アスタロト

 * **死を否定する焔鳥**、フェニックス


 戦場を制するために呼ばれた、支配ではなく突破のための陣容。

 この3柱を核に、冥界の戦場が更に音を立てて崩れていく。


 ---


 黒き羽音と共に、グラシャラボラスの翼が拡がる。

 半径10キロに満ちるのは、**味方への鼓舞と敵への抑圧**。

 霊圧、筋力、魔力が跳ね上がる悪魔達が咆哮し、同時に神々の身体が鈍化していく。


 その加速を活かして、メフィストが**重力を刃に変えた**。

 地を這うような黒光が戦場を横断し、ベルゼバブの群蠅すら巻き込みながら、カーリーの片腕へと届く。

 しかしカーリーは平然と腕を振るい、切断された空間ごと修復せんとする神撃を放つ。


「なるほど、良い配置じゃない」


 アスタロトが滑るように入り込み、反転術式を展開。

 飛来したハデスの死波を\*\*“再生波”へと変換\*\*し、死神たちが意味もなく蘇る。


 それを見た月詠が眼を細める。「遊んでる場合じゃないみたいね」

 背に三日月を浮かべたまま、疾駆するように光刃を振るい、フェニックスの羽を切り裂く――

 だが斬られたその場から、**第二のフェニックス**が炎と共に蘇った。


「時間を稼げ、フェニックス」

 メフィストの声に応え、焔鳥が**連続の蘇生を火柱として展開**。

 神々の攻撃が激化するなか、仲間全体へ回復と再生が循環する。

 それは**死すら誤差とする空間**の誕生だった。


 ---


 戦場はすでに形を失っていた。

 マモンは地獄の門から亡者を解き放ち、敵味方問わず引きずり込む。

 アスタロトの術で門が“無害な出口”になったかと思えば、再び**敵専用の呪殺空間**に反転する。


 グラシャラボラスは、**呪詛の黒炎**を戦場一帯に展開。

 この呪炎は回復を焼き、思考を鈍らせ、そして魔力の残響に引火して爆発する。


 フェニックスは高空から灼熱の雨を降らせ、**蘇生の光と死の焔を同時に撒き散らす**。

 敵が倒れ、再生し、また倒れ、そして焼かれて蘇る――それは冥界に似て、冥界ではない狂乱。


 ---


 だが神々も沈黙していない。


 月詠の斬撃が**時間差で炸裂**し、アスタロトの周囲を複数の三日月刃が囲んだ。

 一閃――空間ごと崩れたが、アスタロトはその瞬間、攻撃と回避を**反転**し自分だけを残す。


「それが、君の精一杯?」

 カーリーの腕が拡がり、神の破壊因子が解放される。

 彼女の放った斬撃が**次元ごと叩き割る断層となり、地形が三層に分断**される。


 その中央に立つハデスは静かに杖を振るい、死域を拡張した。

 空気ごと「死に感染」させる異能が、フェニックスを一時的に無力化――

 だが、炎鳥は**3秒で再起動**し、メフィストの背中を守るように飛び込んだ。


 ---


 そして、すべてが交差した。


 空間が軋む。

 音が消えたかと思えば、光が“内側”から爆ぜる。

 メフィストの重力場が全方位を圧縮し、敵味方問わず時間ごと潰しにかかる。

 アスタロトの反転術が空間の因果を捻じ曲げ、カーリーの神波がそれごと切断する。


 次元が、悲鳴を上げた。


「この場に“存在”していること自体が異常になり始めてるわね」

 月詠が静かに呟いたとき、神核が――“自ら逃げるように”振動を始めた。


 ---


 それでも、メフィストは前に出る。


「……目的は、崩壊じゃない。“突破”だ」


 三柱に命じる。

 グラシャラボラスが黒翼を掲げて結界を壊し、アスタロトが反転術で神々の視界を遮断。

 フェニックスはその瞬間だけ、燃え尽きる覚悟で仲間全員に**蘇生の加護を2重付与**した。


 そして、メフィストが詠唱を終える。

 空間を破壊しながら収束する、**黒重力のレーザー**が冥界の中心に直撃。


 視界が白く塗り潰された。

 爆心から外れた死神たちすら、立つことを諦めて倒れ伏す。


 神核は――まだ砕けてはいない。

 しかし確実に、今、その核心は誰よりもメフィストの指先に近い。

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