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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百三十話 「魔宴召喚」 Trinity of Ruin

「……それでは次は、ベルゼバブでも喚びますかね」


 戦場の中心で、私は静かに魔道書を開いた。

 冥界の地はまだ揺れている。

 サタンが暴れ始めたせいで、地形がもう二度ほど変わった気がするが──気にしてはいけない。


 魔道書の最深部、封印されたページに管理者権限で指を滑らせる。

 ページが開く、その瞬間──


 **ズバッ!**


「……またか懲りないですね」


 死神の大鎌が飛来し、私の身体を縦に真っ二つに切断していった。

 断面が滑らかすぎて少し感心している自分がいたが、まあ、それはそれとして。

 私は両断されたまま、詠唱を止めずに続行する。


「現界すると三度世界を滅ぼすと言われた存在──**ベルゼバブ、解放**」


 空間がひび割れ、魔力の飽和が起こる。

 虚空が捻じれ、冥界の空に黒炎が走った。


 ---


 ## ベルゼバブ登場


 次の瞬間、空間を破壊しながら**彼**が現れた。

 身体の輪郭すら曖昧な、暴走する飢餓と腐蝕の塊。


「──え、なにここ? 壊していいの?」


 にっこりと、無垢な子どもが新しいおもちゃを見つけたような顔をしている。


「フフ……気が利いてるじゃん、メフィスト! こういうの待ってた!」


「ええ、どうぞご自由に。というか壊す前提で呼びましたし」


 私は再接合された身体を整えながら言った。

 やはり、ベルゼバブの本体を出して正解だった。


 ---


 ## 知的ベルゼバブとシンディールの存在


「……しかし、随分と知的になられましたね?

 性格が若干“変質”されたような」


 私は彼の変化に気づいた。これはただの暴力衝動ではない。

 ベルゼバブは、かつてとは違う。言葉を理解し、戦略すら描きかねない精度がある。


「うん、あっちで**シンディール**が教えてくれる。

 あいつ、面白いんだよ。殺すより狩る方が好きになって来た」


「……シンディール……。あの主人とは別のベクトルで有望ですね」


 私は魔道書を閉じた。

 この組み合わせ、非常に面白い。





「ついでに、**マモン**も出してみましょう。どうせなら地獄の三柱、勢揃いで」


 再び魔道書を展開し、封印の次層を解放。

 大気が一瞬で濁り、瘴気が充満する。


 現れたのは、闇に包まれた金属のような肌を持つ巨躯。

 欲望を物質化したような存在──**マモン**。


 その目が開いた瞬間だった。


 **パチン──**


 空気が弾ける音と同時に、**三十体の死神が即死**した。


 ただ、見ただけで。


「……あれ? 殺気だけで殺しましたね? 鍛えてます?」


「……ああ。魔道書の中でも退屈でな。ちょっと訓練をした」


 マモンは静かにそう答えた。

 この落ち着いた殺意──まるで死そのものが人格を得たような存在だ。


「扱いづらいと思っていましたが……意外と**扱いやすい**ですね。

 私十回くらいは死ぬと思ってましたけど」




 冥界の大地には、まだ死神たちの軍勢が残っている。

 ハデスはまだ姿を見せていないが、いずれ動くはずだ。


「では……とりあえず、数が多いので**減らしましょうか**」


 三十体のメフィスト、暴走を始めたサタン、

 自由行動を始めたベルゼバブ、見ただけで殺すマモン。


 そして私自身──全員が笑っていた。


 冥界は既に、冥界ではない。

 ここは今、“地獄”と呼ばれるに相応しい、狂気の劇場だ。


「さあ、開演の第二幕と行きましょう。**神の秩序を壊す時間です**」

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