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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百二十八話 「怪物を育てる場所」 Where Monsters Are Made

 世界が変わり始めていた。

 天と地の境は崩れ、神々が越境し、冥界の門は破られた。

 抑止力はすでに機能を失い、“正義”を名乗る者すら剣を抜く時代が訪れようとしている。


 その最前線に立たされているのが、転生者・ルイ。

 その双子の兄・ランス。

 そして――神殺しを成し得る“異物”たち。


「まずは時間を稼ぐ。最前線はメフィストに任せる」


 冥界から空を睨みながら、ルイは静かに告げた。


「奴は《門》を越え、マモン、サタン、ベルゼバブを伴って突撃する。抑止力の三柱を解き放つ。それで神々が一柱でも消えるなら――充分な成果だ」


 神が神を殺す地獄。

 だが、それすらもルイにとっては“予定通り”だった。


「俺たちは“地の底”へ行く。神すら届かぬ深淵――ダンジョンの最奥へ」


 地図をなぞる指先が、震えることはなかった。

 その瞳には“理”と“殺意”が同時に宿っていた。


「今、ダンジョンすら《龍脈》に染まり始めている。遅れれば、アンデッドや《スタンビート》、さらには変異龍脈種が重なって出現する」


「……最悪、メフィストを出せば全て焼き払えるが」

 肩をすくめたルイの口元に、静かな笑みが浮かぶ。


「奥の手は、生き残るためにある。初手で切るカードじゃない」


 ◆


 三ヶ月後、神々の大戦が始まる。

 世界は一度、確実に“死ぬ”。


 そのとき、自分たちが生き残る側に立っているためには、

 神に抗するどころか、殺せる力が必要だった。


「そのために……一つ、決めよう」


 ルイは一同を見渡し、言い放つ。


「俺はダンジョンを破壊する」


「ええっ!? 国家の管轄じゃ……え、ねぇ本当に大丈夫? てへぺろ☆」


 突然声を上げたのは、南無三だった。

 くりっとした目で、いつも通り舌を出す。


「問題ない」

 ルイの返答は冷ややかだった。


「その国はもう存在しない。王も領主も死に絶えた。ダンジョンの所有権は、今や“力を持つ者”の手にある」


「それに」

 その目に宿るのは静かな破壊衝動――


「俺は錬金術、霊術、魔力炉心を掌握している。

 物資もエネルギーも、俺の手で生産できる。ダンジョン素材など必要ない」


「必要なのは、“素材”じゃない。

 ──力だ」


 神々の手が届かない最後の場所。

 そこは、神を殺す怪物を鍛えるための“育成地”だった。


 ◆


「今回は、各自を特化分隊として再編成する」


 ルイはそう告げ、選抜メンバーを指名する。


【ルイ隊:ダンジョン制圧特化型】

 ルイ:司令塔。陣形構築、術式、召喚・解析・火力の全対応

 十尾晴明:霊術と陰陽呪術の主砲。広域制圧と結界破壊に特化

 芦屋神祖:再生・吸収・呪縛を駆使するタンク兼中核

 ポンタ:変化・擬態により混乱を招くトリックスター

 ドーマン:獣人。突撃・接近・体術

 南無三:索敵・監視・幻術の支援型。情報解析担当

 一つ目小僧(群):全周視野、霊視、精神感応の情報ユニット

 マタタビ(影):魔力供給炉心として稼働。影内から補助行動可

「これが、俺の“手札”だ」


 彼らの任務は、ただ攻略するだけではない。

 “神を殺せる”怪物へと、自らを鍛え上げることだ。


 一方、ランス、アーサー、アシュラ、ナナシ、アラクネ、真祖ヴァレンティナらは別の神域攻略へと動く。

 彼らは異なるダンジョンで、“神性”の遺物を回収し、それぞれの能力を極限まで引き上げる任を負う。


 ◆


「三ヶ月。それがリミットだ」

 ルイは言う。


「それまでに全員が、“神を殺す”一撃を持て。

 最低限、それだけは達成しろ」


 冥界の門はすでに開いていた。

 視えざる神格たちが、空の向こうからこちらを見ている。


 だが、ルイの言葉はただ一つ。


「地獄は──こっちから迎え撃つ」


 ダンジョンの扉が軋む。

 闇の中、踏み出した足が静かに響く。


 そしてルイの声が、深淵に染み込むように宣告した。


「──殺せる神はすべて殺す。それが、俺たちの生存戦略だ」

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