表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
132/177

第百二十六話 「門の向こう」 Beyond the Gate

 戦いの余韻に霊気が揺らめく中──


 一つ目小僧がピタリと動きを止め、冥界門の方をじっと見た。


「ルイさま……門の中、なんか……顔、覗いてるんだもん」


 全員の視線が集まった。

 黒き門の裂け目、その奥に──半分だけ顔を覗かせる死神。

 皺のない皮膚、表情を欠いたその顔は、生き物のものではなかった。


「アラクネ、捕らえろ」


 ルイの指示と同時に、ノクタールが反応する。

 霊糸が門の向こうへ疾り、迷いなく“それ”を絡め取った。


 キィィィッ!


 粘着性の糸が死神を引きずり出す。

 冥界門からずるずると現れたその姿は、白フードの痩せた影──死の化身。


「尋問開始」


 アシュラが腕を組み、芦屋は地面にぬるりと影を広げる。

 だが死神は、何も言わない。動かず、ただ無表情に拒絶を示すだけ。


「……仕方ないな」

 シンディールが一歩前へ出る。


 額に指を当て、静かに言葉を紡いだ。


「脳内抽出・可視転写」


 淡く青白い光が死神の頭上に現れ、空間に思考が文字として展開されていく。


 > 「──神託会議の調整役──」

 > 「──神が多すぎる──バランスの崩壊──」

 > 「──戦争の前に整理が必要──」

 > 「──人類殲滅後、神の粛清を──」

 > 「──冥界門は突破ルート──敵神派閥の殲滅準備──」


「……うわ、めちゃくちゃだもん」


 一つ目小僧がぽつりと呟いた。


「つまり、まず人間を殺して、次は神を殺し合うって筋書きか」


 ルイの声が、冷たく落ちた。


「神の数が増えすぎて、整理しようとしてるわけか……正気じゃねぇな」


 アシュラが鼻を鳴らし、芦屋は小さく頷いた。


「世界の安定じゃなくて、“自分たちが気持ちよく存在する”ための整理整頓か……」


 ◇


「……少し使いすぎたな」

 シンディールが額に汗を滲ませながら呟く。霊体の輪郭が揺れ始めていた。


「召喚の維持が限界に近い」

「神装備の変質、思考可視化……連続使用で霊核が乱れている」


 彼の身体が透け始め、霊気の波とともに消えようとする。


「……神の道具は、魔力が重いからね」


 ルイが小さく呟く。

 ──彼の召喚は魔力の四分の一を必要とし、それを使い切れば霊界に送還される。

 シンディールは静かに頭を下げたあと、インゴットだけを足元に置いて帰っていった。


「しっかり置いていったな」


 ランスが苦笑する。


 ◇


「冥界門の様子は?」


 ルイが一つ目小僧に訊ねた。


「……全っ然見えないんだもん……真っ暗っていうか、見ようとするほど、見えなくなるんだもん」


「視えないってことは、“神域”だ」


 ランスが真剣な声で言う。


「俺たちはまだ“門の外”にいるってことか……」


「そして、メフィストフェレスレベルが“最低ライン”……神を殺すためには、あれと互角じゃないと話にならないってことだ」


 アシュラが肩を回す。


「じゃあ修行するか。殺すために、な」


 ◇


 メフィストフェレスが静かに語り出す。


「“死にたい神”が多くて困ってるようですね。ちょうど良い同僚がいまして──ベルゼバブ、マモン、サタン」


「全員、私と同じくらいの戦闘力。勝ったり負けたり──殺し合ったり殺されたり」


「でも、死なないんですよ。困ったことに」


 ルイは少し口角を吊り上げた。


「殺す意味もない神たちか。でも……」


「神に勝てる強さ、身につけるにはちょうどいい」


「実戦訓練ってわけだもん」


 一つ目小僧がポンと手を打つ。


 ◇


 冥界門はまだ開いている。

 そして、神々の思惑も、狂気も──その向こうで蠢いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ