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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百二十五話 「死王断裁」 The Reaping of the Dead King

 タナトスが第二形態へと変貌した。

 それは神すらも刈り取るための姿──だが。


「……蟻がゴキブリに進化したところで、気持ち悪いだけですね」

 メフィストフェレスは、視線ひとつ変えずに呟いた。


「ゴミはゴミにしかなりませんが、これいかに?」


 タナトスが咆哮とともに斬りかかる。

 《ネクロス・セカンド》──概念ごと命を刈る神の鎌が、空間を裂いた。


 だが。


「遅いですね」


 その刹那。

 メフィストはすでにタナトスの背後に立っていた。

 空間転移ではない、時流の優先権そのものを奪った動き。


 ──重力歪曲パラドキシア・スフィア、発動。


 黒い球体が爆ぜ、タナトスの右半身が消し飛ぶ。


「認めたくないものです。自分自身の、若さゆえの過ちというものを」

「あなたを三秒で殺しておくべきでした」


 タナトスの傷口から、赤黒い霊気が漏れる。

 それを構うことなく、メフィストは容赦なく続ける。


「死神とは、命を刈る者ではない。

 “存在”の責任を背負えなかった者の、逃避の形です」


 ──裁定印アブソリュート・ノータリー

 空間ごと対象を「存在しなかった」ことにする魔印が、次々と刻まれる。

 数秒後、タナトスの左腕と下半身が、まとめて蒸発する。


 もはや暴力ではない。理の暴走だ。


 ◇


「ルイ、あれ……もう俺たち、要らなくないか?」

 ランスが呆れたように笑う。


 だが、ルイは首を横に振った。


「いや──こっちもやる。これは戦争だ、皆で仕留める」


 次の瞬間、ルイたちが一斉に駆け出す。


 南無三が地を割って影を伸ばし、アシュラが六腕で連続の斬撃を叩き込む。

 十尾晴明は空中から霊符を雨のように撒き、ポンタがそれを模倣する。

 芦屋はスライム体で接触し、電磁干渉を起こして鎌の周囲を封鎖。


 そしてランスが──双剣でタナトスの背骨を切断寸前まで追い込んだ。


「残骸にゃ手加減はいらねぇだろ!」


 ◇


 その間にも、シンディールは独自の動きを続けていた。

 タナトスの右腕から砕けた《ネクロス・セカンド》の破片を拾い上げる。


「ふむ……素材としては優秀。じゃあ、はい」


 瞬時に術式を展開。

 ──神殺しの大鎌 → 白銀のインゴットへ錬成。


「いいね。これでまた新しい武器でも作れるよ」

 と、にこやかに笑っている。


 ◇


 そして──決定打はメフィストの手に握られていた。


「死を司る者に問います。あなたの“死”は、誰が裁く?」

「──答えは、私です」


 最後の術式が炸裂する。


 ──審判式封印サモン・ヴァニタス・ロック


 その一撃が直撃したとき、

 タナトスの神格が砕け、

 全身から死の霊気が音もなく崩れ落ちた。


 重力が戻る。

 空気が、息を吹き返す。


「……終わりだ」


 ルイの言葉を最後に、

 死神タナトス、完全沈黙。

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