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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百二十四話 「死の覚醒」 Thanatos: Second Revelation

 空気が変わった。

 否、それは**空気ではない。「生」そのもの**が圧迫されている。


「ッ……なんだ、これは……」


 アーサーが剣を構える手を止めた。

 霊気に満ちた空間で、ゴーレムを操っていたシンディールの目が細まる。


 タナトスの黒衣が、風もないのに揺れていた。

 その体から放たれる霊圧は、明らかに異質な変質を見せていた。

 腐敗でもなく、静寂でもなく、闇ですらない。

 ただ“生”を否定する、純粋な「死の原型」。


「やれやれ……厄災そのものやな〜」


 十尾晴明が、狐火を消して後退する。


 ルイが魔道書を閉じた。


「……タナトス、本気を出すつもりだな**」


 応える声はない。

 だがその代わりに、音が消えた。

 霊魂の波動が“無”に近づくことで、この世界の“存在”そのものが削られていく。


 タナトスの背に、無数の影が浮かぶ。

 それらはかつて彼が刈り取った魂の残滓──

 滅された神、英雄、魔王たち。

 もはや記録にも残らぬ、**抹消された存在たち**。


 シンディールが呟く。


「……提案がある。メフィストの並列存在、統合して“本体”を召喚しようか」


「出し惜しみは、もう要らない」


 ルイが即答する。

 その瞬間、空間が割れた。


 光の門が現れ、そこから現れたのは──

 悪魔メフィストフェレス、本体たる契約存在。



 その姿を見た瞬間、空間の死霊たちがざわめいた。

 彼らすら畏れる何かを感じ取ったのだ。


「シンディール」


「了解。ソイソイ、ペイッと」


 指先で軽やかに術式を弾くと、シンディールは2体のメフィストを霊的融合させた。

 二重契約による完全制御──それは\*\*この世界すら対象に含む“万能調停者”\*\*の出現だった。


「ふふ……久しぶりの“完全招来”……**実に三千二百六十八年ぶりだ**」


 彼は周囲を一瞥し、タナトスを指さして、笑う。


「**恐らく、私ひとりで片がつきますが?**」


 冗談のような軽さ。

 だが直後に繰り出された行動は──笑えない。


 ──**“構築式干渉”**


 それは禁忌中の禁忌、相手の存在基盤に干渉する術式。

 タナトスの腕がもげ、肩口から煙が吹き上がる。


 ──**“終焉定数調律”**


 時空と因果の均衡を改竄し、タナトスの回避行動そのものを「なかったこと」にする。


 ──**“魂環の虚無化”**


 彼が殺した魂の残滓たちを無効化し、タナトスの支配霊群を瞬時に消し去る。


 その一撃一撃が、タナトスの絶対性を削っていく。


「……ば、馬鹿な……」


 タナトスが、初めて声を漏らした。

 あの死神が、完全に押されている。

 そして──


「遊びはここまで」


 メフィストが指を鳴らした瞬間、

 タナトスの体が激しく痙攣する。内部構造が崩壊し、制御不能に陥る。


「ッ……やめろ、これ以上は──!」


「ほう、口が回るうちに喋ったら?」


 無数の封印術式がタナトスの体に穿たれる。

 死神の外殻が崩れ落ち、中から異形の影が這い出した。


 それは、“死神”の本質──**抑圧されていた神核そのもの**。


 そして、それが呟いた。


「──ならば、解くとしよう。封印形態、解除……」


 空間が軋む。時間がねじれる。


「**真なる死に至る構造へ──《タナトス・セカンドフォーム》、顕現**」


 黒衣が破れ、漆黒の羽根が背中から展開される。

 四肢が細長くなり、顔は仮面のような無表情。

 右腕に宿った鎌は、もはや神殺しではなく、**概念刈りの器**と化していた。


 ──神の鎌、《ネクロス・セカンド》


 そして彼は言う。


「これより先は、存在そのものの審判。備えよ、魂の騎士たち」


 対峙する一同に、膨大な霊圧が襲いかかる。


 だが、ルイの目は揺るがない。


「構うな。**全員で、殺す**」


 戦場が、最終局面に入る。

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