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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百十四話 「天光の守手」 Halo Sever, Dragon Breaker

 空気が腐る。

 地を這う無数のアンデッドが、喉も無いのにうめきながらこちらへ向かってくる。




 斬り伏せる音の中、俺は輪を放つ。

 空を駆ける七つの光の弧が、味方の死角を覆っていく。




「左下、回復急げ。ポンタ、後衛支援──!」


 輪の一つが爆ぜて、割れた地面の前に盾を生む。

 その影に、魔導士たちが滑り込む。

 もう一枚の輪が回復光を広げ、癒しの膜を張る。




 切っ先は誰にも向けない。

 俺の剣は、戦場の流れを“整える”ためにある。




 芦屋が無言で俺の背後に気を重ねる。

 それだけで防壁が倍層になる。




「もう少し持てば、押し返せる……」




 そのときだった。




 ズズズ……ゴゴゴ……




 空気が震える。

 地が軋む。

 何かが、集まり始めていた。




 遠くの丘から、獣の頭蓋。

 右手の谷から、馬の脚骨。

 戦場に散った骨までも、空を滑って舞い上がっていく。




 骨が、骨を引き寄せる。

 風がねじれ、闇が螺旋を描く。

 異様な構造体が、空中でかちかちと音を立てながら、竜の“型”を組み上げていく。




「止めろ! あれが完成したら終わりだ!」




 一斉に攻撃を仕掛ける。

 魔法、斬撃、槍の波。




 だが、骨は止まらない。

 どれだけ崩しても、他の骨が代わりに補う。




 芦屋の発勁が一点を貫くが──砕けた頭骨は、すぐ新たな骨に差し替えられる。




「……チッ」


 骨の大群が螺旋を描き、最終構築が始まる。




 そして。




 ゴォオオオオオオオオ……ッ!!




 空が叫ぶような咆哮。

 それは既に、獣ではなく、“存在そのもの”が吠えた音だった。




 スカルドラゴン




 千の骨、万の魂が一つに繋がり、黒く光る竜骨となって天を睥睨する。




 その瞳がこちらを見た瞬間、背筋が凍る。

 いまだ、術者がその魔力を流し込んでいる。




「攻撃中止。全員防御に切り替えろ!」


 輪が即座に再展開。

 広域結界を形成し、衝撃に備える。




 竜が大口を開けた。

 次の瞬間には、吹き飛ぶ地面と、爆ぜる空気と、叫ぶ味方。




 だが、誰一人死なせない。




 全員を、守る。

 この輪が砕けても、何度でも展開する。




 この戦場、まだ終わってない。

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