第百十話「鋭刃の舞踏 居合一閃」 Blade’s Dance The Flash of Iaigiri
薄暗い霧が街を包み込む中、茨木童子の刀が静かに抜かれた。足元の瓦礫を踏みしめるその動きは、まるで踊るように軽やかで正確だった。
膝を柔らかく曲げ、刃を鞘から滑らせる一瞬、その空気が切り裂かれる。真っ直ぐに伸びた刃は、敵の襲撃を一閃で断ち切る。
仲間の背後へと迫る矢が飛来した瞬間、居合い切りが閃き、飛び交う矢が見事に真っ二つに裂かれた。
その動きは迷いなく、鋭く、何度も繰り返されるが一切の無駄がない。まるで刀と一体化したかのような所作。
「拙者にはとても真似できぬでござる……」
茨木童子は呟く。仲間たちが繰り出す技をじっくりと観察し、その卓越した連携に息を飲む。
一つ目小僧の虹色のレーザーが一帯の死者を一掃し、
アラクネの黒い糸が敵の呪文を寸断。
酒呑童子の拳撃が大地を揺らし、芦屋神祖の炎がアンデッドの軍勢を焼き尽くす。
次々と現れる敵の波に、茨木童子の居合いはまさに舞踏のように繰り返される。
斬撃は的確に敵の攻撃を切り払い、時折仲間に迫る矢も冷静に断ち切った。
「考える暇など無いでござるな……」
彼の胸に緊張が走る。勝利の確信はまだ遠い。だが、日々の鍛錬を信じ、今はただ一閃に全てを込めるのみ。
敵の連携は巧妙で、その数は途切れることがなかった。
だが、こちらも無双の技で応え、確実に敵を削っていく。
一撃一撃に仲間の気配が重なり、戦場は彼らの舞台となった。
霧の中、彼は次の敵の動きを見据え、刃を構え直す。
勝てる気がしなくとも、心は折れない。精進あるのみでござる。




