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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百四話「死角からの一閃」 A Flash from the Blind Spot

挿絵(By みてみん) 

 29階層──矢を放ち、魔獣を従え、淡々と進む。

 一連の動きは無駄がなく、もはや狩りではなく作業に近かった。

 30階、31階、32階。

 繰り返される戦闘。素材は書が自動で回収し、歩みは止まらない。

 モンスターの強さは増すが、特に苦戦はしなかった。

 だが──

 ここからは違う。


 33階層


 そこは、**突破者の踏破者0**とされる危険地帯。

 モンスターの強さは急激に跳ね上がり、個々の生存本能が露骨に牙を剥き始める。


 その入口をくぐった瞬間、足元の空気すら重くなる。

 気を抜けば、足首をかじられ、心臓を突かれる。

 そんな“濃密な死”の気配に、無意識に息を潜めていた。


「……そろそろ遊びじゃ済まないね」


 ひとつ、深く息を吐く。

 心拍を落とし、重心を下げる。

 指先から足裏まで、一つの意志で統合するように身を調律する。


 そして──最初の咆哮。


 突如、左右の壁を突き破って、牙の生えた猿型モンスターが飛び出した。

 スプリット・バブーン。機動力と集団戦術に優れる群体種。


 だが、こちらも即応。


 矢が一本。

 風を裂いて抜け、頭蓋を貫通。


 さらにもう二体。

 回避運動に入るより早く、足場を崩して片足を奪い、

 回転の勢いで振り抜いた肘が、顎を叩き砕いた。


 瞬間、別方向からの影。


「──っ!」


 こちらを視認する前に、振り下ろされた斧をスライドで回避。

 そのまま背後へ転がり、流れるように弓を引く──射る──貫く。


 一撃、一撃、すべてが連動した“動きの線”で完結していた。


 ふと、頭上で熱が揺れた。


 瞬間、空を走る紅の閃光。


 まっすぐに飛んだそれは、はるか上空──空間そのものを灼き裂き、

 遥か遠くの崖に激突して黒煙を上げた。


「……何?」


 見当違いにもほどがある角度と方向。

 モンスターの群れどころか、誰にも掠らない軌道。


 ただ、その直前──あの“ひとつ目”は微動だにせず、空の一点を見据えていた。


 だが、それは今はノイズに過ぎない。

 現実には、まだモンスターが残っていた。


 右、左、死角の連携。

 三体が囲むように襲いかかる。


 ──囲まれているのは、こちらか?

 いや──連中の方だ。


 地を蹴る。

 円を描くように膝を回し、腰で引き絞った重力を一気に解放。


 一撃、胴体を圧砕。

 飛んだ肉塊の間を縫って踏み込み、次の一体の頭蓋を踵で沈めた。


 残り一体は、仲間の血を浴びて足を止め──

 その脳天に、矢がひとつ刺さっていた。


 沈黙。

 視界に敵はない。


「ふぅ……」


 汗ひとつかいていない。だが、気配は依然、濃密だ。


 この先にあるのは──レイドボス。


 大広間の前に立つ。

 微かな振動、そして“重圧”。


「……さて。集中、集中」


 背筋を伸ばし、

 ゆっくりと歩を進めた。


 中は、広大な空間。

 毒の湖。酸の霧。

 そしてその中央──


 ──巨体が、ひっくり返っていた。


「……あ?」


 毒沼に片足を浸け、仰向けに倒れた巨大な蛙型モンスター。

 レイドボス《ヴェノミック・トード》。


 その体は所々が黒く焦げ、ピクピクと痙攣していた。

 口元には血泡、片脚は焼け落ち、背には深い裂け目。

 まるで、巨大な熱線で撃ち抜かれたかのように──


「……うっわ、やってたんだ」


 焦げた残骸の中心に、うっすらと残る円形の焼痕。

 あの時、空を裂いた紅の閃光。

 見当違いに思えたそれは──“ここ”を狙っていた。


 ようやく、全てが繋がる。


「……外したんじゃない。撃ってたんだな、」


 でかいのでテイムはしない


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