第百二話「シャインマスカッティス、見た」 I Saw Shine Muscattice
……いや、ほんと無理。
何アレ。
ボクの名前はシャインマスカッティス。
希少種の果実型魔獣で、攻撃魔法は苦手だけど、回復と応援が得意。
基本は魔力水が主食で、魔石肥料を根から吸うのが至福。魔石を砕いて混ぜたやつね、あれがまた最高なんだ。たまに丸ごと齧るのもアリ。あと、空腹のときはモンスターを丸ごとバクってやるけど、これは内緒。
今日は素材採取のお手伝いってことで呼ばれたんだけど――
「ついでに戦力にもなって」って言われたから、ボクなりに頑張ろうと思ったんだよ。
ルイ様のために!
役に立って、評価上げて、できれば!できれば!
住居ランクも上げてもらって、部屋に空調つけてほしいし、肥料の配給量も増やしてもらえたら最高だし!
福利厚生!充実!希望!!
で、気合入れて戦場に出たら――
矢。
ひたすら矢。
「シュッ」って音の一つも聞こえない。
光の筋が走ったかと思ったら、モンスターが吹っ飛んでて、次の瞬間には地面に転がってる。
動き、見えない。
てか矢、見えない。
は????
ルイ様、弓持ってるだけじゃなかったの??
矢ってあんな速くていいの??
戦闘ってそういうもんだっけ……???
――で、ぼんやり周囲を見渡して、もっと絶望した。
尻尾が10本くらいに見える、やばいやつ。
身体の奥からぼんやり光ってるのに、毛先は炎みたいに揺れてる。絶対ヤバい。
あと、神祖スライムの“あの人”
周りにスライムがぷかぷか浮いてて、コアの中で何か動いてる……え、これ味方???
影の中からスルッと出てきた黒いのは、最初気づかなかった。
気配が無さすぎて怖い。心臓止まるかと思った。
あ、小さいのもいた。
ボクの半分サイズの子で、目が大きくてつぶらでちょっと安心……した瞬間、
「め、目から虹色のビームッ!?」
ボクの半分のサイズの一つ目小僧(※かわいい系)が、魔導砲みたいなビーム出してるのを見た瞬間、膝から崩れたよね。
あっ、これ、ムリだわ。
あっ、これ、死ぬやつだ。
でも大丈夫。ボクもうテイムされてるから。
完全にルイ様のチーム側だから。
安心安全。死なない保証付き。
というか、ほんとに――
テイムされて良かったーーーー!!!
たぶん敵だったら一瞬で塵になってた。
塵どころか、素材認定すらされず、風に溶けて消えてたよボク。
でも、今は違う。
今は、ルイ様のチームにいる。
生きてる。
おいしい霊果実をもらえるかもしれない。
空調付きの部屋、夢じゃない。
だからボク、決めたよ。
一生ついていきます、ルイ様!!
ご主人様ぁぁあああーっ!!!
好きぃいいぃー!!!
主従っていうかもう、信仰! これ信仰の領域!
光の王子!
魔弾の貴公子!!
ボクらの太陽!!!
――なお、その後、ルイ様に
「戦闘評価:マスカッティス、支援B、反応A、おたけびS」
って言われた。
“おたけびS”って何??
でも褒められたから嬉しい。
今日も元気に生きてます、ご主人様♪




