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セレトリア冒険譚  作者: ユーシズ公国出版社の記者
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セレトリア冒険譚第二章

アンジェロはよく言いました。"よく考えて選択しなさい。自分で悩んで悩み抜いて決めた結論は、間違っていたとしても納得することができるのですから。常に考える事を忘れないで"

デモーネはよく言いました。"視点を広げる意識を持とうねー? 武力も策謀も財力も、手段の一つでしかないんだからさ。勝てるならどんな手段も正しいんだよ。まずはそれを認めよー"


2体が常日頃から口にすることを吸収し、自分なりに常に考え続けることを、視点を広げることを行い続けて育ったセレトリアが考え付いたのは、ひとつの秘策だった。

魔晶石が必要なのであれば、魔晶石が採れる場所に居座れば使い放題なんじゃないか、と。それを伝えたときの2体の表情は呆れていた気もしますが、ある意味で間違いではありませんでした。

夜中はせっせと魔晶石を掘り、昼間に魔晶石のマナに物を言わせて魔法の修練を積む。これを繰り返すうちに、彼女自身のマナも増え、魔晶石の扱いも格段に上手くなっていった。


しかし、この秘策には穴があった。魔晶石が採れるような鉱山は大体が国や組織が管理しているということを、幼いころに捨てられてからずっと人里から離れて暮らしていたセレトリアは残念ながら知らなかったのだ。ある時、鉱山を管理している組織の人員が見回りに来た際に当然ながら見つかり、ばっちり盗掘しているところを見られてしまう。泥棒だと思われた(事実間違いではない)彼女は彼らと取っ組み合いになり、何人かを倒すことはできたものの、数の暴力で捕まってしまうのだった。


捕まえられて連れてこられたのは鉱山近くに存在する地方都市だった。鉱山を管理していたシエルタ・ファミリーは、地方都市の中に存在するマフィアの一つで、シノギを潰していたと見なされたセレトリアは娼館に売られかけてしまう。話している意味はあんまり理解できなかったものの、なんかやばそうだぞと獣の嗅覚で判断した彼女はもう一度暴れ始める。シエルタ・ファミリーの下っ端構成員をちぎっては投げ、大立ち回りをしていると、その姿が偶然シエルタ・ファミリーのボスの目に止まった。彼女が単なる泥棒ではなく、力を求めていることを見抜いたボスは、さらに強くなりたいなら自分たちの家族になれ、と彼女を勧誘した。そして、やはり話している意味はあまり理解していなかったが、彼女も強くなれるならとシエルタ・ファミリーに入ることを了承したのだった。これ以来、彼女はただのセレトリアから、セレトリア・シエルタと名乗るようになる。


シエルタ・ファミリーで、セレトリアは様々なことを学んだ。基礎的な交易共通語の読み書きから始まり、人族文化の中で生活する術を習得していった。また、当初の目的であった対人戦のコツや駆け引き、恫か……威圧のやり方なども構成員たちから吸収していった。基本的に自分のこだわりやプライドというものもなく、素直に教えをせがんではみるみるうちに技能を習得し、他意もなく感謝を告げる彼女は、マフィア組織では珍しいタイプであり、シエルタ・ファミリーの構成員たちからも可愛がってもらえる存在となっていた。武力という点では初めから上から数えた方が早いところに居たものの、脚が悪いという明確な弱点があったことも、親しみやすさを覚えてもらえる一因となったのだろう。数年たたないうちに、彼女はシエルタ・ファミリーの中核の一人となっていた。シエルタ・ファミリーの決定を遂行するための剪定を行う獣、"剪定獣"セレトリア・シエルタ。それが彼女の二つ名だった。


しかし、そんな生活も永遠には続かない。端的に言えば、セレトリアが強くなりすぎたのだ。地方都市内のマフィアたちの勢力バランスが崩れ始め、徐々にシエルタ・ファミリーに力が集まり始めてしまった。このままでは、ほかのマフィアに連合を組まれてシエルタ・ファミリーが潰されてしまう。そう考えたボスは、最悪の結末を迎える前に彼女を切る、つまりはファミリーから追放することに決めたのだった。


"謝りはしねえ。これが最善ではなくてもリスクが少ない次善ではあると思ってるからだ"

"俺の信念ってやつだな。俺のファミリーのために、俺は俺の好きにさせてもらう"

"だから、おめえも好きにしろ"

"この決定が不満なら、暴れろ。またいつか潰しに来い。ここに来た時のようにな。俺が許す"


追放前夜のボスとの会話で、この問答に対してセレトリアがどう答えたのかは彼と彼女しか知りえない。今はなきシエルタ・ファミリーから話を聞くこともできないだろう。ただ、最後の報酬としてもらった信念のリングを、彼女がずっと身につけていることから、彼女からしてもシエルタ・ファミリーは彼女の中では大きな存在となっていたのだろう。


そうして、追放処分を受けた彼女は、シエルタ・ファミリーを後にして、旅に出るのだった。

セレトリア冒険譚第三章に続く……

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