病弱な令嬢
「お嬢様宜しいのですか?」
「平気よ、ばあや。心配なさないで。」
麻友子はこちらの女学校にいる間は父が所有する別荘に数名の使用人と暮らすことになった。
「しかしお嬢様、今日は編入初日ですし、もしものために馬車で行った方か宜しいのでは?」
「ばあやは心配症ね。わたくしが平気と言っているじゃない。」
麻友子は乳母がとめるのも聞かず家を出る。
「ばあやったらいつまでわたくしを子供扱いするのかしら?わたくしはこんなに元気なのに。」
麻友子は墓地の前の道を歩きながら乳母への不平不満をこぼしている。麻友子は幼い頃夏になると毎年別荘に遊びに来ていた。そのときに見つけた抜け道なのだ。
墓石はどれも花が添えられ手入れされている。遺族が近くに住んでいてお参りによく来ているのだろうか?しかし1つだけ明らかに手入れが行き届いてない墓石があった。花も枯れ墓石の周りは草だらけである。麻友子がその前を通った時
「うっ」
突然頭痛に見舞われた。
「痛い」
今すぐにでもしゃがみ込みたくなった。しかしここは墓地の真ん中だ。麻友子は重い足取りで墓地の道を抜ける。目の前は川原だ。麻友子は芝生へとしゃがみ込む。先ほどよりも少し気分が楽になる。
「君、大丈夫か?」
麻友子は声をかけられる。目の前には白い軍服姿で白馬に跨がる人物がいた。
「貴女のことジャンヌダルクかと思ったわ。」
麻友子は今朝の事を栞に話す。
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。彼女の伝記なら兄からもらった本を読んでいるんだ。」
「わたくしも入院中は外に出られなかったからずっと病室のベッドの中で読んでいたわ。お父様が送ってくださったの。」
「なあ、」
栞が麻友子の手を握る。
「今日の放課後僕の家に遊びに来ないか?」
麻友子は首を縦に振る。学校の帰りの友達の家に寄るのは初めての経験だ。
その日の放課後。
「さあ乗って。」
麻友子はジャンヌの背に乗ると前にいる栞の肩を掴む。
「しっかり捕まっててね。」
憧れのジャンヌダルクの馬の背に揺られていく。
川原沿いの道を通り畑が見えてくる。近道に入っていく脇道に入ろうとした時
ひひーん!!
ジャンヌが鳴き声を上げる。
「どうしたんだ?ジャンヌ。」
ジャンヌは朝と同じで近道に入りたくないようだ。
「ジャンヌ、こっちの道ならすぐだろう。」
「わたくしもそっちはあまりいい気がしません。」
麻友子が栞の背後で助言する。
「朝通った時に荒れ果てた墓石の前で頭痛がしたの。」
「仕方ない。遠回りするか。」
栞は朝と同じく人通りはあるが時間がかかる道を選ぶことにした。