編入生
「彼女が気分悪そうにして付き添っていたら、今日この学校に編入してくると聞いて同じ組だというので連れてきました。」
栞は教師に事の成行を説明する。
「分かったわ。石川さんは席に付きなさい。」
「はい。」
栞が席に着くと教師は編入生を紹介する。
「さあ、黒板に名前を書いて。」
編入生は教師に言われると黒板に自分の名前を書く。
「わたくし本日より東京から引っ越して参りました。黒川麻友子と申します。」
麻友子は袴の裾をつまんでお辞儀する。
「黒川さんは東京の学習院女学院から編入して参りました。」
「先生、学習院女学院ってあの?」
1人の生徒が声をあげる。学習院は東京にある有名なお嬢様学校である。
「でもどうしてわざわざお嬢様学校からこんな田舎の学校に?」
「静かに。黒川さんは1年間入院していて
、お父様の勧めでこの学校に来ました。年は皆さんより1つ上ですが仲良くしてあげて下さい。」
その日の昼休み。
「黒川さん」
級友達が麻友子の周りに集まる。
「一緒にお昼食べましょう。」
「ごめんなさい、私石川さんに用があるの。」
麻友子は栞の姿を探そうと教室中を見渡す。しかし彼女の姿はどこにもない。
「あの方中庭よ。きっと」
「お昼になるといつもいなくなるのよ。」
「あの娘なんて放っておいて私達と食べましょう。」
しかし麻友子は栞を探しに中庭へと行ってしまう。
「栞さん!!」
中庭に着くと麻友子は栞の姿を探し出す。
花壇が多い庭園でテラスもある。テラスで昼食を取っている生徒の姿は見えるが栞の姿は見つからない。
「栞さんどこかしら?」
ガサガサ
草村から物音がする。
「何?!」
「ひひーん」
突然白い馬が現れた。馬は麻友子に近づいてくる。
「こら、ジャンヌ!!」
馬は手綱を引かれる。
「石川さん。」
「君は黒川さんか。」
「貴女の事探していたのよ。一緒にお昼食べましょう。」
麻友子は栞の隣に座るとお弁当の包みを開く。
麻友子がお弁当箱の人参を食べようとした時
「きゃっ!!」
横からジャンヌが食べてしまう。
「こらっジャンヌ。」
「構わないわ。さあ、ジャンヌちゃんもお食べ。」
栞はジャンヌを叱るが麻友子は箸で人参を掴むとジャンヌの口に入れていく。
「君は面白いな。」
傍で見ていた栞が呟く。
「あら、どうして?」
「どうしてって僕はこんな姿だし、教室じゃ浮いた存在なんだ。」
「あら、そんなこと気にしませんわ。貴女はわたくしを救って下さった。フランスの英雄ジャンヌダルクかと思いましたや。」
「本当か?嬉しい事言ってくれるな。」
突然栞の顔に笑顔が見える。