1時間小説シリーズ - 合わせ鏡
「合わせ鏡をすると未来と過去に繋がるらしいよ。」
昨日、オカルト好きな友人が楽しそうに都市伝説の話をしていた。
そしてそれを実践してみるとも言っていた。
オカルトは好きな方だ、中学生の頃なんてよく友人とそういう話もしていたし、肝試しもやったことはある。
でも、そういった出来事に実際にあったことはない。そうなると、
やっぱり作り話なんだな。
と、どんどん興味がなくなっていく。飽きたというのが正しいか。
ただ今日、ちょっとだけ、また興味が湧いた。
その友人が朝から顔を見せないのだ。
何かあったら絶対に教えるからね。
少し興奮しながらそう言っていた友人は夕方になっても来ず、連絡しても繋がらない。
夜遅くにやると言っていたし、そのまま爆睡してる可能性もあるが、
何かあったのかもしれない
不思議な何かがあった。その可能性がわずかにあるだけでもワクワクしてきた。
そして思った。
自分もやってみようと。
調べてみると、合わせ鏡のやり方は色々あるらしい。
ただそこまで本格的にやるつもりもないので深夜0時過ぎぐらいに鏡を合わせて、ちょっと覗いて終わりにしよう。
そして深夜0時
お風呂場に全身鏡を持っていって、鏡を合わせる。
ちゃんと合わせ鏡になっていて、鏡の無限トンネルができていた。
昔、実家の三面鏡でやったことがあるが、改めて見ると不思議な光景だ。
なるほど、これならばいろんな迷信をくっつけたくなるものである。
そして、その間に入っていった。
無限に続く鏡トンネルに私がたくさん映る。
奇妙な気分だ。ずっと、無限の私が私を見つめ返してくる。
手を振れば当然振り返すし、笑えば笑う。
しばらく眺めて、遊ぶが、やがて飽きる。
そろそろ片付けようとした時、何か違和感を覚えた。
しばらく見つめ直すが、やはりただ私の顔だけ無限に並び、見つめ返してくるだけだった。
次の日、友人は普通に顔を出した。
実家からの呼び出しをくらい、ずっと手伝いをしていたらしい。
合わせ鏡で何か起こったか聞くと、友人は
「何にもなかった。やっぱりただも迷信ね。ただ延々と自分の顔と、後ろ姿が映るだけだった。」
その言葉に私は昨日の違和感に納得した。
私はふと、脳裏に浮かんだ言葉を友人に聞いた。
メメントモリって知ってる?
友人は知ってるがどうしたのか、と逆に聞き返されたので
私はただ笑った。
「なんでもない、今日飲みに行こうよ。」
後悔はない。
精一杯楽しもう。