06 ウシさん
ウシさんとは比較的接する機会が多い。
蛇さんやカナヘビさんに比べ、彼らはいつも同じ場所にいてモーモー言ってる性質があるからだ。偶然性がほとんどない。脱走してる奴がいたらちょっとびびるけど。
今私はドも小もつかないちょうど田舎に住んでいるので、しばしばウシさんの牧場の横を通るし、仕事でも接する機会があるのだが、その都度牛さんからは同じ反応を頂くのである。
「ブモーーーオ!」ガシャァー(冊にぶつかる音)
「なんだか興奮して来ちゃったみたいですね! 離れてください!」
そう! 私は牛の皆さんに一目で嫌われるのだ! なんでや。前世でウシの大量虐殺でもしたのかよ。牛の怨霊でも取り付いてんのか?
私が牛舎に入るだけで雄牛はツノを振り立てて体当たりし、雌牛は俯いて悲しげに鳴くのだ。私も悲しい。牛肉も豚肉ほど食べないのに……。別に香水つけてるわけでも赤いマント着てるわけでもないのに……。
仕方ないので牛さんとはなるべく関わらないようにしている。
ちなみにウマの皆さんからも嫌われる。馬の皆さんは怒るというよりは馬鹿にしてくる感じである。馬なだけに。彼らは見るからに「軽んじてまーっす☆」みたいな態度を露骨に取ってくるのでわかりやすい。なお、年取って懐が深くなった馬さんはその限りではない。
もう一つ言うと、人さんたちの中にも10人に2人くらいの割合で「まともに喋ったこともないのにいきなり蛇蝎の如く嫌ってくる」人がいる。牛さんたちと同じ波長の人なのかな?
彼ら彼女らにどうしてそんなにいきなり私が嫌いなのか聞いてみたら牛の皆さんが私を嫌いな理由もわかるかも知れない。