転生
おぎゃー、おぎゃー!
「奥様、お疲れ様です。元気な男の子ですよ」
…ふむ、無事生まれたようだがまだ周りがよく見えないな。言葉も知らない言語みたい。ただ、優しく抱かれているのがわかるだけだ。む、誰かが声をあげて遠ざかっていく。
「まぁまぁ、サラは元気ね。すぐにお父さんが来ますよ」
抱いてくれている女性から綺麗な声が聞こえてくる。色もなんとなくしか見えないが黒髪みたいだ。何を言っているかはわからないが安心する声だ。…早く言葉を覚えたいな。まずは無事に生まれたことを感謝しよう。本当に神様がいる世界だ、神に感謝かな。
(無事に生まれたようだの。ローザにも知らせておいてやろう。)
!? 声が聞こえてくる。出生の神様だろうか。ひとまず感謝の祈りを奉げよう。
(おや、聞こえていたかね。ローザが初めて転生を頼んできたから見守っておったのだ。儂は転生を司る神、シャガネイア。異世界関係も儂の管轄だの。どれ、儂の加護も与えておこうか。これで言葉もすぐ覚えられるはずだ)
どうやら既にお世話になっていたようだ。加護もくれたし良い神様のようだ。ありがとうございます。
(うむうむ。加護があれば祈りも届きやすいしの。ではこの世界を楽しんでくれ)
そんな話を聞いていたら誰か来たようだ。ずいぶん慌ただしいな。
「おお!よくやったぞソフィ!」
言葉がだんだんわかるようになるのは不思議だな。流石は神様のご加護だ。
「ありがとう、あなた。この子の名前は決めてくれた?」
「ああ、イリヤ。イリヤ・フェリクスだ!」
ほう、俺の新しい名はイリヤか。それに家名があるということは貴族かな?なんて考えていると母親が父親に顔を向けてくれた。とりあえず髪色は…青!? やはりファンタジーだな。
いくらファンタジー世界でも俺は赤ん坊なわけで、次第に眠くなり意識を手放した。
「あなた、イリヤのお付のメイドはサラでいいかしら?」
「いいだろう。息子を頼んだぞ、サラ。」
「かしこまりました、旦那様。精一杯お仕え致します!」
そして三か月が経ち周囲もハッキリし、家の中の人物についてわかるようになっていた。目につくものを片っ端から鑑定した結果だ。まずは自分について。
イリヤ・フェリクス 人族 男性 0歳
ステータス
HP 10 MP 50
力 5 頑強 2 魔力 40
知力 90 器用さ 15 運 300
スキル
魔力操作 身体強化 器用さ上昇
EXスキル
鑑定 想像魔法 完全記憶 完全隠蔽
加護
ローゼアンヌの加護
シャガネイアの加護
称号
異世界転生者
努力家
ポジティブ
これを確認した時は驚きローザ様に感謝した。加護の恩恵が凄い。そして完全隠蔽を貰っておいた自分を褒めた。このままのステータスは家族には見せられない。
家族は両親と二人の兄、そして使用人達だ。やはり貴族だったようで父の称号にフェリクス子爵家当主とあった。あまりお偉いさんの跡継ぎは嫌だなと思っていたがやはり幸運だった。
「イリヤ、お乳が飲みたいのかしら?」
そう言って母ソフィアが近寄ってきた。この時間が苦痛に近い。前世を含めると少し年下になる母のおっぱいに吸い付かなくてはならない。なんというか、恥ずかしさと背徳感があるのだ。本当にまだ性欲がまだなくてよかったと思う。それはさておき今日は新しい試みだ。
「かーさ」
「!? 私のことよね?なんてお利口なのかしら!サラはもう呼ばれていて?」
「いえ、まだです、奥様。それにしても早いですね。ジーク様もボレア様も一歳を過ぎてからでしたのに…」
「さら?」
「!? これはたまりませんね。旦那様に知らせて参ります!」
サラは顔を赤くして去って行ってしまった。やはり話すのは早かっただろうか。そう思いながら母乳を飲んでいるとサラと執事長のセバスを伴って父がやってきた。
「イリヤがもう喋りだしたと聞いたぞ!ほら、父さんも呼んでくれ。パウルでもいいぞ!」
「けぷっ。とーさ?ぱうぅ?」
「おお!イリヤは天才だな!将来はどんな職に就くだろうか。学者か、いや大賢者と呼ばれるか…」
まずい、父さんが壊れた。とりあえず泣いておこう。
「! あなた、落ち着いてください。お仕事は終わっていて?」
ナイス母さん。もっと言ってくれ。
「今日は仕事は終わりだ!宴の準備だ!」
「そういうわけには参りませんよ、旦那様。執務に戻りましょう。聡明なご子息に嫌われるやもしれませんよ?」
「なんだと!?それはいかんな。仕事に戻るぞ!」
嵐のように来て去って行ったな。流石はセバスだ。
「お騒がせしました。イリヤ様。失礼します。」
そう言って去っていくセバスを鑑定すると”執事ですから”と表示された。謎過ぎる。しかしこの方法で初めてコミュニケーションをとった時は驚いた。ニッコリと微笑むセバスが怖かったがだいぶ慣れてきた。そのうち二人になったらちゃんと聞いてみよう。
「イリヤ、父さんはあんなこと言ってたけど別に何になってもいいんだからね。」
母にそう言われてきょとんとしてしまった。こんなにも優しくしてくれるのはローザ様以来だろうか。なんだか自分が認められたようで嬉しくなった。…今世では親に誇れるように生きようと思えた。
「なんて言ってもまだ難しいわよね。さあ、疲れたでしょう。おやすみなさい」
母の温もりを感じながら眠りについた。




