勝利と幸運の女神さま
初投稿です
よろしくお願いします
目が覚めた。知らない天井だ。
「…死ねなかったのか」
男は自殺していた。無精髭を触りながらも、周りは真っ白な空間で現実味がない事にも気付かないほどに冷静ではない。
「気づきましたか、三田 良さん?」
声を掛けられて初めて自分以外の人が居ることを知った。
「…ここは、病院でもない、の、か。あなたは?俺はどうなって?」
「あなたは死ねましたよ。私は…あなたに解りやすく言えば女神の一柱です。」
そう言われて驚きながらまじまじと見てしまう。天使の輪がくっきりと見える位に艶やかな金髪、切れ長な目に蒼の瞳。モデルでもあまり見ないほどに整った姿をした女性が立っていた。
「無事、死ねたとは、言えなさそうですね。あれですか?転生モノですか?」
自殺したのに自我があることで不満に思い、不遜だとは思いながらも目の前の女神に突っかかってしまう。
「…やはり察しますか。そうです。所謂異世界転生モノです」
不躾な態度だったにも関わらず苦笑しながらノって応えてくれる。この時点で今まで読んだことのあるそういった本の中から最悪のパターンはなさそうだと思い、少し安堵する。
「あなたが自殺した経緯や状態は客観的には見て把握しています。ですので、次も無理だと思えばまた自ら命を絶っても構いません」
自分のことを人に余り話してこなかった良にとっては初めての理解者だった。それも自殺して構わないと言ってもらえたことに驚き、感謝した。
「いつ死んでもいいなら役目とかは無いような感じなんですね。わかりました。ちなみにここにはどれくらい居られるのでしょう?」
まずは情報を得るために色々と聞くことにした。無論それだけではないのだが。
「厳密には違いますが、その認識で問題ありません。それとここには…そうですね、説明や能力授与、質疑応答が終わるまでとしましょう。…恥ずかしながらあなたの考えているもう一つの理由ではここには留まれませんよ?」
「心が読めるのですか?困りましたね…。早々に嫌われるとは本当に美人さんとは縁がない。」
ただ美人な女性と話していたいという目的は果たせなさそうだと思いながらも情報は得られそうだと安心していると、
「心は読めませんよ?推測です!そ、それに嫌ってなんかいませんから!」
慌てた女神様、マジ可愛い。そんな事を考えながら一歩下がってしまった。口説くようなセリフは言えても女性免疫はないのだ。そんなことを考えているうちに女神様も落ち着き
「コホン。説明からしていきますね。まずは私について、勝利と幸運を司るローゼアンヌといいます。あなたの転生先の世界、レウハーバの女神の一柱です。レウハーバの神々からはローザと呼ばれています」
ローゼアンヌ、ローザ様か。勝利と幸運ということはギャンブルの神様だろうか。そう言われれば俺が呼ばれるのも無理はないな。賭け事の時はいつも無形の美人な女神に祈っていたし、ローザ様のところに届いていたのだろう。
「ギャンブルの神様だったのですね。祈りが届いていたようでなによりです」
そう言うとローザ様は呆れたような少し怒ったような顔で、
「…主に戦神として扱われています。あなたの祈りで賭け事に関しても少し関わるようになりましたが。他の世界の神に影響を与えるほど熱心に、明確に祈られたのでこちらの世界で加護を授けようと思ったのですよ?」
後半は少し微笑みながら話していたので本気で怒っているわけではなさそうだ。無礼なことを言って嫌われたかと思ったが安心した。
「それは失礼しました。えーと、ご加護とは?先ほど言っていた能力授与でしょうか?」
「能力とは別ですね。加護は私が司るモノを与えることです。先に授与する能力を決めてしまいましょうか。その方が世界についても理解しやすそうですしね」
そう言ってローザ様が軽く手を振るとタブレットのような物が現れた。
「その中から好きなものを三つと汎用のものから五つ選んでください。見ただけでは分からないでしょうから先に鑑定だけ授与しておきましょう」
なんと大盤振る舞いだろうか。これはまさかのチート転生ではないか。言われた通り見ていって世界のお勉強をしよう。
まとめるとやはりおなじみの異世界ファンタジーのようで魔法や魔物、ステータスがあるみたいだ。結構身分差もあるようで貴族とかが治める国が多いことも予想できた。
「生まれる先とかって決まっているんでしょうか?それによって選ぶものも変わると思うんですけど…」
「転生先は人族の男としか決まっていません。ただ、加護は既に授けてあるので悪い生まれにはならないでしょう」
なるほど、確かに幸運の加護があれば生まれを恨むような不幸にはならないだろう。よし、それならば…。
汎用からは、魔力操作・身体強化・器用さ上昇・努力家・ポジティブ。他からは、想像魔法・完全記憶・完全隠蔽だ。これで荒事もこなし、自殺せず、チートをもかくせるだろう。
「決まりました。これでお願いします」
決めた能力を入力したタブレットを渡すとローザ様も一つ頷く。
「随分とじっくりと見ていたようですね。世界についてもなんとなくわかったでしょう。では最後の質疑応答をしましょうか」
最後と言われて少し震えた。一度はあんなに死を望んでいたはずなのに…。やはり異世界転生チートで浮かれていたのだろうか。そう考えてローザ様を見るとなんだかここを出るのが怖くなった。転生先でこんなにも自分に何かを与えてくれる人はいるだろうか。
「……またローザ様に会えるでしょうか?」
これには女神と言えども難しいようで少し困ったように、
「ならば祈ってください。そうすれば少しはお話できるかもしれません。会うのは…厳しいでしょうね」
そう言って少しだけ俯いた。それを見て甘えすぎか、と自嘲した。この自分が浮かれるほどに様々なものをくれた女神さまに何か返そうと思い、
「分かりました。ではたくさん祈りますね。今度はしっかりと生きるので見ていてください。最後のお願いです」
頭を下げて頼んだ。何も返事がなく恐る恐る頭をあげると驚いた顔で固まっていたのが動き出し、
「祈ってもらうのに最後のお願いだなんて言わないで。またお話しましょう。そして少しは頼ってくれていいのですよ?これは生きる道を選んだあなたへの最初のお願いです。」
小さく微笑みながら頼んできたローザ様が綺麗で今度はこちらが固まってしまった。少し首を傾げるのを見てようやく口が動き、
「了解です!あの、あまり見ていると見惚れて動けなくなるので転生をお願いします!」
「ふふ、いいでしょう。ではあなたの人生に勝利と幸運があらんことを」
ローザ様の宣言のあと瞼が重くなり、目を閉じると意識を失った。
こうして三田 良は消え、転生が行われた。
近日中に次回投稿します




