サブタイって何?
英雄譚。
「えいゆうたん」
「ん?どうしたアカリたん。急に可愛いこと言い出して」
「またそれ読んでるの?」
「英雄譚は最高だぜ!」
「トーレ、って人だっけ」
「そうそう。初代国王の右腕だった人が書いたんだ」
「飽きない?」
「まさか。初代国王の一生はまさに伝説。男のロマンだからな!」
「一生?」
「正しくは七日だ」
「・・・ショボ」
「七日で国を統一したんだぞ!?凄いの一言だろ」
「七日に人生を賭けた、的な?」
「命短し、だな」
「それが男のロマンなの?」
「そうだ!」
「そっか。キミはセミになりたいんだね」
「ん?」
「キミはまだ土の中にいるんだよ」
「・・・どういう事?」
「まだ本気で生きてない、みたいな?」
「なんかかっこいいから採用です」
「頑張ってね」
「おう」
「腑抜けヤロウ」
「一日一回は罵倒しないと死ぬ病気なの?」
「私の本気はそこにある」
「アカリは英雄にはなれないな」
「英雄のヒロインになるからイイよ」
「・・・なら頑張らないとな、俺が」
「あ、はい」
掟。
「掟ってよくわかんない」
「勉強不足だな」
「教科書には載ってないもん」
「まだ諦めるな!」
「どういうこと?」
「そんなアカリにこれを貸そう!」
「ん?」
「さぁ!受けとるんだ!」
「・・・それ英雄譚じゃん」
「百八十三頁から読むんだ!」
「早く!間に合わなくなっても知らんぞっ」
「うるさいよ」
「静かにするので読んでください」
「や」
「アカリはこれだからなー」
「なに?」
「なら俺が教えてやるよ」
「なら聞く」
「その体にな!」
「あらいぶ」
「ん?」
「それとも、DEAD?」
「いい発音だ。アライブで頼む」
「了解」
「じゃあ、まずひとつ目な」
「その前に良い?」
「どうしたんだ?」
「全部でいくつあるの?」
「ふたつだ!」
「えぇ・・・なんか・・・あれ・・・」
「争いを起こさないための掟だからな。大事な事だけ、と考えたんだろう」
「多いと覚えられないしね」
「初代国王は意外と面倒臭がりだったのかもしれないな」
「君みたい」
「それは違うぞ」
「それで、ひとつ目は?」
「ひとつ目は、不可侵の掟だ。これは簡単に言うと他の国に入ってはいけないってやつだな」
「私が水の国へ入ったら駄目なの?」
「あぁ」
「もし入っちゃったら?」
「牢屋にゴーだ。無期限にな。最悪スパイと見なされ国同士の争いにも発展しかねない」
「厳しい。ふたつ目は?」
「不殺の掟だ。どんな理由があれ人を殺してはいけないんだ」
「人以外は良いの?」
「一応な」
「なら、人の形をした人じゃないモノは?」
「それは・・・人じゃないんじゃないかな?言葉通り」
「ふーん」
「もしかしたら、人に入るかもしれないけどな。初代国王に聞かないとそこは分からん」
「そっか」
現国王。
「今はいないよね?」
「あぁ。初代国王がすぐいなくなってからはまた四国に別れた」
「いついなくなったの?」
「英雄譚によると、一日だな」
「凄く生き急いでる人なのかな?」
「どうも突然と居なくなったらしい。理由は書かれていないな」
「死んだ?」
「どうかな?王妃も一緒に居なくなったから、今頃二人で静かな所で暮らしてるんじゃないか?」
「奥さん、いるんだ」
「めっちゃ可愛いらしい」
「ふーん」
「アカリには負けるけどな!」
「へー」
「本当だよ?」
「はいはい」
「・・・本と「もうイイよ。ありがとね」
凶獣。
「あまり見掛けないな」
「基本的に洞穴からは出てこないから。夜行性だし」
「でもワンコにはよく会うぞ?」
「ワンコは違うもん」
「えっ、あいつ凶獣じゃないの!?」
「ワンコはワンコだよ。新種」
「そっか・・・。そう言えばあいつ」
「んー?」
「人の言葉喋れるもんな」
「なにそれ凄い」
「この前、は?って言われた」
「・・・は?」
「もしかしたらあいつは人の生まれ変わりなのかもしれない」
「偶々だよ」
「絶対そうだから!」
「怒らないでよ。なんで急に怒るの?」
「アカリが俺のロマンを理解してくれないから!」
「意味分かんない・・・」
変態男とナイフ。
「あいつ何者だったんだ・・・」
「私が説明する」
「アカリ!?」
「はい」
「はい」
「それよりあの男」
「おっさんだったな」
「はい」
「はい」
「どこかで見た気がする」
「あー、その現象な。デジャなんたら」
「多分、違う」
「そっか」
「あと、このナイフ」
「今アカリが持ってるやつな」
「うん。このナイフは黄金の国の物」
「それは確かなのか?」
「この模様はあの国独特の模様だから。間違いない」
「じゃああの男も?」
「さー?」
「ですよねー。でも何でそんな事知ってるんだ?」
「えっへん」
「いや・・・理由を聞いてるんだが」
「えっへん」
「理ゆーーー」
「えっへん」
「・・・理由は分からないが理由を話す事はできないんだな」
「えっへん」
「あのナイフが世界の今後の鍵を握っているのかもしれない」
「と言うか」
「ん?」
「同じ模様の包丁家にあるよ」
「まさか母が握っていたとは」
アカリの力。
「ぷにぷになのに意外と力がある。実は結構筋肉質だよな」
「嬉しくない」
「身長は同じだし俺ぐらいなら持てなくはないのかな?」
「キミがガリガリ君なんだよ」
「確かにアカリよりは軽いかもな」
「むー」
「嘘だよ」
「ひゅしゅー」
「可愛い」
「それキライ」
「膨らんだほっぺた見ると指で押したくなる衝動、ありませんか?」
「ありません」
「でもなんでそんなに力あるんだろうな?」
「産まれつきだから」
「天性のものであったか」
「知らないけど」
「ですよねー」
二十年前の大戦。
「父さんと母さんは二十年前の大戦を生き抜いた猛者だ」
「何言ってるの。あれは言うほど大きくもなかったわよ」
「でも英雄譚には大戦って」
「歴史の本って言うのは、少し大袈裟に書いてあるものよ」
「そうなの、父さん?」
「そうだなー・・・そんな雰囲気はあったが、俺は戦になってる事すら知らなかったな」
「えぇー・・・」
「世の中そんなものよ。上の人達だけで揉めて、私達の知らない所で争って、知らない所で終わってるの」
「夢がないなー」
「争いの中にあるのは現実だけよ」
「お、母さん良い事言ったじゃないか」
「あら、そう?ありがと、お父さん!」
「仲良しかよ」
終わり。