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3 騎士団長ソレイユ



「はぁ、このような場面になっても決して恐れを見せませんか。随分と肝がすわっていますね」


 ソレイユは、武蒼の首筋に数センチに剣を構えながら、  心中を覗き見るような目で睨みを効かせた。


「まぁな、見たところいきなり斬りかかって来るようには見えないからな。」

「……そうですか。しっかりとした眼をもっているじゃないですか。……ですが、今から尋ねることに少しでも嘘を付いたら」


 ソレイユは思いっきり踏み込み、剣先を武蒼の首元にあて、


「この首を切り落とします……」


 ソレイユが放った殺気に、恐らくコロシアム内の全ての人間が硬直しただろう。肌身に感じる、それほどの殺気を武蒼も感じたのはこれが初めてだった。

 最前列で武蒼のことを囲っていた騎士は、震えから武器をその場に落としてしまっている。


「いいかですか?私に嘘を付いたらすぐにバレると思ってください。それを踏まえた上で、私の質問に答えなさい」

「……あ、あぁ。分かった」


 武蒼はゆっくりと首を縦に振った。


「……それで質問を初めます。まず、貴方は王国に牙を向ける敵ですか?」


 ソレイユは剣を肩に乗せながら、武蒼の周りをゆっくりと回り始めた。


「違う。俺は訳も分からずここに連れてこられただけだ」

「……ふむ。それじゃあ目的はなんですか?」

「目的もクソもねぇーよ。なんで、こうなってるの分からないし……」

「……目的も無し。それならば、貴方は少し珍しい格好をしていますがらどこの国のものですか?」

「日本からだよ。逆にここはどこなんだ?建物的にイギリスとかそっちの方の国のイメージだけど……」

「……日本?聞いたことがない場所ですね。しかし、嘘は着いていない、と」


 質問をされ続けている武蒼は、質問の内容から現状の整理をしようと、脳をフル回転させていた。

 

 今のところ得たヒントは、日本ではないが言語が日本語。

 「王国」というワードから「王」を君主として統制している国であること。

 そして現在、武蒼は道場の道着を着ている。

 良くあることなのだが、この格好で外に出るとよく外国人に「ジャパニーズサムライ!オー!ベリークール!!」との声をかけられる。

 この格好を知らないということがあるのだろうか。


「ここまでの質問で、貴方が得体のしれない者だということは分かりました。それではとりあえず最後の質問です。貴方はその剣を持っていましたが、もしかして騎士なんですか?」


 ソレイユが足を止め、指を指したのは先程囲まれた時に地面に置いた竹刀のことだ。


「……いや、騎士ってより剣士か?」

「ふむ……剣士というものは初めて聞くが、おおよそ騎士と同じものでしょう。……それなら私と1戦交えてください。言葉を交わすより、剣を交えた方が早いでしょう」


 ニヤリと笑い、獲物を狩る猛獣のような目をするソレイユ。

 そんな、ソレイユの決闘の申し出を聞いた周りの騎士たちは、急にザワつき始める。


「団長!団長の剣をそんな、どこの骨とも分からない奴に見せる必要はないですよ!」


 騎士団の誰かの声を火種に、先程まで口を閉じていた騎士団が一斉にヤジを飛ばし始めた。


「静まれぇ!!!」


 だが、そんな騎士たちの燃え盛るヤジを鎮火したのは騎士団長ではなく、観客席にて一連の流れを見ていた国王であった。

 国王らしからぬガッチリとした体型に顔に無数にある傷跡。

 国王というよりかは、屈強な騎士と言った方が納得出来る、 そんな国王は騎士団長と目を合わせ、コクと頷いた。


「今からこいつと1体1の決闘を行います!騎士団は場を開けなさい!」


 ハッ!という掛け声と共に一瞬で消え去る騎士団達。

 最初にいた神官もいつの間に闘技場内からいなくなっていた。


「おっと!その決闘、審判は俺がやるぜぇ〜!!」


 その時、ソレイユとも引きを取らない大きな声が、再びコロシアムに響き渡った。

 しかし方向は左でも右でもなく上空から聞こえる。

 刹那、ドカンと言う激しい轟音と共に土煙が上がった。


「こんどはなんだよ!!」

「ふぅ〜、なんかおもしれぇ事になってんじゃねぇーかよ!ソレイユ嬢ちゃんよぉ!」


 土埃の中には身長2mをゆうに超える影があり、徐々に風に流れていく土埃のなか、武蒼はその男を見た。


 大男じゃ言 表せられないその体の大きさに、大木かと勘違いするほどの太い腕。ソレイユの鎧は紅色だがこの男の鎧は、美しい水色に染まっている。

 背負っている斧は普通の男性が10人居ても持ち上がるビジョンが見えないほどの大きさで、顔は鉄仮面に覆われて表情は伺えない。


「仕方ないでしょ、ブルタス副団長?今日の見廻り担当なのですから。それにしても早かったですね。他の3人はまだですよ」

「これが……副団長?」

「おぉ!俺の手にかかれば見廻りなんてちょちょいのちょいよ!……んで、こっちのガキが儀式の賜物か?」

「そうです。こいつが光をもたらす者らしいですよ?」

「ふ〜ん、こいつが、ね」


(儀式?光をもたらす者?……なんの事だ)


 ブルタスは武蒼に顔を近ずけるやいな、鉄仮面越しにニヤリと笑った。


「ま、決闘すりゃあ分かんだろ!ルールは俺が決めていいかい?ソレイユ嬢ちゃんよ」

「ええ、ブルタス副団長に任せます」

「そっちのガキもそれでいいかい?」

「あ、あぁ……俺も構わない」

「それじゃあルールの説明をする!基本は決闘と全く同じルールだ。お互い魔力も魔人も精霊も宿ってない普通の剣を使用。おい誰か、この2人に普通の剣を渡してやってくれ」


 武蒼は今まで真剣を握ったことはない。

 竹刀との差、重さと長さをその場で軽く振って確かめる。

 しかし、何故か初めて真剣を握ったのにも関わらず、手に付くのだ。

 高鳴る鼓動と身体の疼きを深く息を吐き、落ち着かせ、ソレイユから間合いを取り始めた。

 ソレイユも同様に間合いをとり、お互いが10メートル程離れたところで足を止め、ブルタスにアイコンタクトを送った。


「そして今回の決闘では、一般決闘で禁止とされている魔法の使用を許可する!!」

「……魔法!?!?おい、なんだよそれ!!」


 ブルタスの口からは今、確かに『魔法』というワードが出てきた。

 武蒼もたまに息抜きで漫画本を見るのだが、魔法という言葉を見聞きするのもそういうファンタジーの世界だけで現実でこう真面目の場で聞くのはまず無い。


「だ、団長の魔法が見られるのか!!」

「あの男なんて瞬殺だろ!!」


 そんなファンタジーなワードを笑いもせず、むしろ武蒼に向けてヤジを飛ばし、ボルテージが高まる周りの騎士達。


「なんなんだよ、まじで。……ふぅ、まぁいい」


 武蒼はここで分析を続けていたが、ついに考える事を辞めた。そして、目の前の敵を狩るためだけに剣を構えた。


「両者、国王に恥じぬ戦いをする事!それでは、始めっ!!!」


 ブルタスの叫びが開戦の狼煙を上げた。


読んで頂きありがとうございます!

次は騎士団長といきなりのタイマンです!

ブクマに登録して続きを待っていただければ幸いです┏○ペコッ

良ければ評価もお願い致します!

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