2 別世界
世界は変わり、魔物と魔人が蔓延る世界『グランピア』
その世界で「最後の砦」と言われる王国ツバルディの国王ドラチュウドは、とある儀式を行おうとしていた。
始まりは、ある探検家が雨宿りに使った洞穴で見つけた1つの石碑だった。
石碑には「約束の地『フレイ』『ロングパレス』」と大きく書かれ、その下に小さく「禁忌呪文」と書かれた詠唱文、裏側には「蔓延るものが闇ならば光をもたらす者ここに現れし」と書かれていたのだ。
探検家は歴史的な大発見だと歓喜し、その石碑を王国に持ち帰りあちらこちらに話を広めた。
その話は瞬く間に王国中に広がり、国王の耳にもその話が届いたのだ。
そして後日、国王がその石碑を買い取り、その他の権力者の会議の結果、儀式が行われることが決定した。
場所は何が起きるか分からないということもあり、王国にある闘技場で国王やらその他の上級貴族が儀式を見届ける中、できる限り最大の警備体制の元で行われた。
儀式開始ーー
王国の中でも選りすぐりの神官20人が、同時に禁忌呪文の詠唱を開始した。
複雑に描かれた魔法陣の中央にむけて手を向け、1字1句間違える事なく詠唱を続ける。
流石は選ばれた神官なだけあって、その腕は確かなものだ。
詠唱開始から1分、莫大な量の詠唱文を読み終えたその刹那、闘技場には光が満たされた。
「え……?」
光が褪せたその場所には見知らぬ男が1人、そこに立ち尽くしていた。
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佐々木武蒼は未だに状況が飲み込めないでいた。
目を開けたら先程までいた竹林ではなく、西洋のコロシアムのような所にいるのだ。
そして、場内にはローブを着た謎の人間達がおよそ20人ほど、観客席にも人がチラホラといる。
「そやつを囲め!!!!」
そんな時、女性の怒号がコロシアム中に響き渡った。
放心状態だった武蒼も、その声で我に返り手に持つ竹刀を構える。
「な、なんだよこれ……」
だが、気がついた時には数十を超える騎士に囲まれていた。
先程まで、コロシアムの中にはローブを着た人達しか居なかったはずなのに、気がつけば一瞬で囲まれてしまっていたのだ。
しかも、一人一人がしっかりとした鎧を纏い、美しく輝く刀を持っている。竹刀ではない真剣をだ。
「ったくまじでなんなんだよこれ……」
武蒼は焦ることはなく、頭は冷静であった。とりあえず竹刀を地面に置き、両手を上げ、敵意のないことを示す。
「俺に敵意はない!ただ、いきなりここに連れてこられただけだ!!」
「それは私が判断します。道を開けなさい!!」
先程の女性の声が再びコロシアムに響き渡った。
すると、武蒼の正面に構えていた騎士達が左右に動き、そこに1本の道が出来る。
そして、その1本道を歩いてきたのは、他の騎士達とは明らかに雰囲気も風貌も違う、ただひたすらに美しい女性だった。
鎧の色は他の騎士とは違く、紅色に染まり腰ほどまでになびく髪の毛は、鎧と同じ美しい色をしている。整った顔立ちに少し釣り上がった目。
「私の名はソレイユ・マジュ!この王国の騎士団長をしています。……今から貴方にいくつかの質問をさせて頂きます」
そう言い、彼女は剣を抜いた。
(……穏便に話が進む、なんて事ある訳ないか)
武蒼は心の中でため息ををつき、ソレイユから眼差しを外すことなく見続けた。
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