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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

妹が吸血鬼になっていました。

作者: 白黒ヤギ




私の朝は早い。


「お姉ちゃん、朝ごはんが出来ましたよ!」


そんな明るく透き通るような声が部屋に反響して私の耳へ。


その声の主は、お姉ちゃんと呼ばれるエイナこと私の妹リイナ。可愛い妹が私の為に作ってくれた朝ごはんはとても嬉しい。嬉しいのだが…。


「…んぅ…あと5分…」


眠気には勝てなかったよ…。


というか私は悪くないはず。なぜならまだ日の出を迎えておらず、外も暗闇が支配している、そんな時間帯。普通の人ならまだ眠っている時間なのだ。


つまり私のこの反応にも頷けるだろう。あと5分?それは言葉のあやというか、お決まりのセリフというか、ね?


「だめですー起きてください!冷めてしまいます!」


「あっちょっ起きるから揺すらないでぇ…」


しかし、だからと言って寝かせてくれるリイナではない。私の眠るベッドのそばまで歩み寄り私の身体をゆする。


しかし、その力が尋常じゃなく強い。そのため、脳が暴れているのでは?と錯覚(さっかく)するほど揺さぶられた私はすぐさま降参、起き上がることにする。


ふぅ、頭がぐわんぐわんしてるよ。でもまぁせっかく作ってくれた朝ごはんを冷ましてしまっては悪いしね。


寝ぼけまなこを擦り、欠伸を噛み殺して愛しの妹に朝の挨拶をする。


「おはよ、リイナ」


「はい、おはようございますお姉ちゃん」


彼女はとびきりの笑顔で返事を返した。

うん、リイナは今日も可愛いね!





「どうぞ、召し上がってくださいね!」


椅子に腰を下ろし、テーブルに並べられた朝ごはんを眺める。

トマトのリゾット、ほうれん草のポタージュ。うん、貧血予防のメニューだね。

だからなんだと言われたらそれまでだけど事情があって最近はこんな感じのメニューが多い。

まぁリイナとの暮らしも割と最近からなので正確にはリイナと暮らし始めてからこんな感じのメニューになった。


それまではどうだったのかって?時たま自炊、大体外食って感じです、はい。別に料理ができない訳では無いし嫌いな訳でもない。ただ面倒なだけです。いいじゃない、お金はあるんだもの。


さて、そんなどうでもいい話でせっかくの料理が冷める前に頂きましょう。

リイナが私の為に(ここ重要)作ってくれた朝ごはんを!


「いただきます!」


「はい召し上がれ!」


私はにこにこ微笑むリイナに見つめられながら料理に舌鼓をうった。





「ご馳走でした」


「お粗末様です、お姉ちゃん」


食べ終わった食器を重ねていくと「私がやりますから」と申し出るリイナに「いいからやらせて」と断る私。


用意してもらっているのだから片付け位は私がやらなきゃ気が済まないのだ。


もちろんリイナも食い下がろうとするが洗い場に持って行ってしまえばこっちのものだ。さっさと洗い物を済ませてしまう。


そしてバスケットに入っているリンゴを見つけ、食後のデザートにしようと、包丁片手に鼻歌交じりに軽快な手つきで皮を剥いていく。


「〜♪…痛っ!?」


しかし、久々に包丁を扱った私は手元が狂ってしまい、自分の指に当ててしまう。


少々深く切ってしまったみたいで、切り口から真っ赤な鮮血が(またた)く間に流れ出る。


「たはは…初心者かよ〜…」


最近まともに料理してなかったから腕鈍っちゃったのかなぁ?最後に料理したのいつだっけ?リイナに任せきりだったからなぁ。

すると向こうからパタパタと足音が聞こえてきた。


「お姉ちゃん!大丈夫?!」


するとさっきまでリビングで座っていたリイナが慌てて私のもとに寄ってくる。

咄嗟に怪我した手を背中に隠し、「何でもないよ?」と自然な笑みを浮かべる。


しかし、リイナは鋭い目付きで私に近づき、私の腕を掴んで前に出す。

そして私の指に気づき目を見開くリイナ。心做(こころな)しか鼻息が荒く、目も血走っているように見えた。


「やっぱり怪我したんですね…お姉ちゃん、隠そうとしても血の匂いでバレバレですからね?」


「ち、血の匂いって…」


「えぇ、とてもいい匂いがしますよ。…美味しそう…はぁ、もう我慢できません…」


ふと、彼女の雰囲気が変わる。ゴクリと喉を鳴らし、モノ欲しげな瞳で傷口──もといそこから流れている血を見つめて。


「──いただきますっ」


「はうっ?!」


手に取ったままの私の指を自らの口へ、そして咥えるリイナ。お陰で変な声が出てしまった。


しかし、そんな私を他所に咥えた指を舌で軽く傷口を舐め始める。

ザラザラとした舌の感触が指先から伝わり、こそばゆく感じながらも、振りほどくことはしない。


尚も丹念に舐め続けるリイナはまるで飴細工を必死にしゃぶる子供のようで私は愛おしく思えた。


表面の血を綺麗に舐め尽くすと、リイナは指から口を離す。ねっとりと唾液が絡みつき、指と唇の間には、名残惜しそう銀色の橋が架かっていた。


リイナに目を向けると彼女と目が合った。そんな彼女は上目遣いで私にねだる。ずるいなぁ…そんな事されたら断れるわけないじゃない。


「お姉ちゃん…もっと頂戴?」


私の妹は、吸血鬼になっていました。

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