~第二の錦織圭たちに贈る言葉(28)~ 『1ポイントを取るための戦略・戦術の組合せパターンを練修し体得しておけ』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(28)〜
『1ポイントを取るための戦略・戦術の組合せパターンを練修し体得しておけ』
1. まえがき;
2019年全仏オープンで錦織選手は間違った戦略戦術ショットをたびたび打っていた。
例えば、ドロップショット。(戦略;ネット付近で勝負する、戦術;ドロップショット)
サイドラインに近いベースライン付近からドロップショットをクロスサイドのネット前に落したが、相手選手はそのクロスサイドの正面ベースライン付近に立っていたので、ボールを楽々拾い、ネット沿いのクロスにエースを決めた。ドロップショットは打球を放ってから相手選手がボールに届くまでの時間が勝負である。ドロップショットをクロスに打つことは、ボールが地面に落下するまでに最長時間がかかる。更に、ボールの落下地点が相手選手から最短距離にあるので、ボールに追いつくまで時間がかからない。ドロップショットは自分の立っている場所の正面ネット前に落すのが基本。そして、その落下地点は相手選手からはコートをクロスする最長距離にある場所であることが重要。
例えば、サーブアンドボレー。(戦略;ネット付近で勝負する、戦術;強力サーブ)
サーブをサービスコートのワイドサイドに打ち込んでネットに走った時、相手選手はサイドラインの外からネットポールの外側を巻き込んで自陣コートのサイドライン近くのコートコーナーにボールを落としエースを奪った。ネットに走った時はボレーが出来る球が返ってくるようにサーブやアプローチショットを打つ必要がある。ワイドにサーブが決まれば、サービスエースになるか、ロビングなどの甘い返球が返ってくる。それを狙えば良い。ネットに走ると自分の居ない場所に相手からの返球は落ちるので危険である。ボディーかセンターライン際を狙った場合のみネットに走るべきである。レシーバーはサーブの落下地点を予測しているので返球されてくるが、気の乗ったボールは浮き球でしか返球出来ないので、それをボレーしてエースを取れば善い。
2. 贈る言葉;
宮本武蔵の五輪書によれば、試合中の目の付けようは『観の目強く、見の目弱く』である。『観の目』とは相手を感じることであり、頭脳の海馬で相手の気や脳波を感じとることであり、『見の目』とは相手を目で視て、頭脳の大脳皮質の視覚野を活動させることである。
大脳皮質の思考回路が働くと小脳から筋肉への命令信号が遅れたり、筋肉動作の精度が落ちたりする。したがって、プレーヤーは海馬の『観の目』を重視してプレーする。
プレーヤーは感覚的に技術を選択するため、反射的に選んだプレーが理にかなっているかどうかを(大脳皮質の記憶回路を使って)判断する時間はない。
選んだプレーが間違いでないようにするには、練習段階で理にかなったプレーを体得しておかなければならない。この為にパターン練修が必要となる。試合状況を想定し、ドロップショットの正しい使い方、サーブの正しい使い方を感覚として身につけておかなければならない。
トッププレーヤーの錦織選手でも間違うのである。よくよくプレーを吟味し、体得すべし。そして、ここ一番のワンポイントを奪ってゲームを取れ。
3. あとがき;
ドロップショットは時間が勝負。サーブは時間だけでなく気すなわち拍子が勝負。ストロークは拍子が勝負。ワンポイント戦略・戦術をよくよく吟味すべし。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2019年6月7日
参考文献;
五輪書 神子 侃 訳 徳間書店 1963年8月発行
ニュートン別冊 脳と心 ニュートンプレス社 2010年11月発行
ニュートン別冊 脳とニューロン ニュートンプレス社 2016年9月発行
頭脳のメカニズム エドワード・デボノ著 箱崎・青井訳 講談社 昭和47年2月発行