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豪華寝台列車殺人事件 第4章8節

閲覧いただき、ありがとうございます。

ラウンジに向かうと、バジルがちょうどオドレイと話しているところだった。


「あら、こちらの男性は?」


オドレイがリアムに気づくと、バジルに尋ねた。


「リアム・アルベールと申します。宜しくお願い致します」


リアムはあえて、自分が探偵だということを明かさなかったが、オドレイは会得したように頷いた。


「この方が例の怪しい女性を探していらっしゃるのね?確か名前は…オリビア・ワトソンといったかしら」


リアムは未だにオリビアを容疑者として扱われるのに慣れておらず、身体を強張らせてしまう。オドレイはそれに気づいてか、申し訳なさそうに微笑んだ。

そんな2人の様子を傍らに、バジルは首を傾げた。


「ええ…でも乗客リストにはオリビア・ワトソン様という方はいらっしゃらないんですよね…メモワール号は乗客全てのお客様にチケットを購入時に名前と電話番号、住所とサインを頂いていますから」


その言葉を聞いて、オドレイは指を口に当てて、意味深に微笑む。


「あら…そうなのね。でしたら、誰かがオリビア・ワトソンに成りすましているんじゃないかしら…そうね、自由に動けるとしたら乗客よりも駅員かしら。背格好からして女性ね」


オドレイのその言葉に思わず、バジルが狼狽する。


「わ、私達を疑うのですか?」


「可能性の話よ。ねぇ、リアムさん。貴方の意見が聞きたいわ。どうかしら?この老いぼれの考えは」


「そうですね。可能性はあると思います。ただ、バジルさんが犯人とは限らないです。今後は乗客だけではなく、駅員も警戒した方がいい…どれだけ気心知れた同僚でも、です」


リアムがそう言うと、バジルは表情をなくした。そして、バジルは逃げるようにその場を後にした。


「脅かすつもりはなかったんだけど、彼女には悪いことをしたわね。私は彼女は犯人だとは思わないわ。監視カメラでも見れれば一発なのだけれど、生憎直ぐには見れないみたいね」


「オドレイさん。貴女は…」


「私、推理小説が大好きなの。出来事をあれこれ考察するのが好きで…偶々ここであった可愛らしい小説好きの女の子と思わず会話が弾んだわ」


白い猫を撫でながら、オドレイは目を細めた。


「さて、リアムさん。目撃情報を貴方にも教えるわね。栗毛の長髪に特徴的なブレスレット、カッターシャツにシフォンスカートに革靴…そして果物ナイフ。身長は160cm手前かしら…そうね、貴方の顎下くらいの」


オドレイは、つらつらと女性の特徴を述べる。リアムはそれを書き記すと同時に首を傾げた。


(私の顎下くらいの身長…?オリビアはもう少し背が低かったはず)


オドレイはそんなリアムの疑問に勘付いたのか、手を差し出した。


「リアムさん。疑われているオリビア・ワトソンの写真はないの?貴方、知り合いなのでしょう?」


リアムは一瞬躊躇いの表情を見せてから、写真を見せた。


「やっぱり。この子違うわよ。耳の下あたりにあったホクロが彼女にはないもの」


「それは本当ですか?」


リアムの明るい声にオドレイは苦笑いしながら、頷いた。


「私はそれよりも、あの子が怪しいと思うの…」


オドレイはそう言って、疑っている人物の名前を口にしようとした。


その時、車椅子の車輪の音が聞こえ、オドレイは、はっとして口を閉じた。


「オドレイおば様?こんなところにいらしたのね。駅員さんの聞き込みは終わったの?」


オドレイは笑顔で肯定し、席を立つ。

車椅子の女性はリアムに気づき、お辞儀をした。


「お話を中断してごめんなさい。ドロシー・バリエと申します」


「いえ、構いませんよ。リアム・アルベールと申します」


リアムはドロシーにも話を聞こうと口を開いたが、オドレイはそれを制した。


「リアムさん。私達これから少し話があるから、いいかしら?ドロシーさんの話はバジルさんからお伺いしてくださる?」


リアムは少し戸惑ったが、オドレイの有無を言わさぬ様子を見て、引き下がった。


「触らぬ神に祟りなし…私達は平凡な日常が好きなんだよ。こんなことに首を突っ込みたくない」


オドレイは、小さな声でそう言うと、すぐにドロシーの車椅子を引き、ラウンジを後にした。


リアムは、ただ2人の後ろ姿を見送るしかなかった。


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