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高級ホテル殺人事件 第1章4節

閲覧いただき、ありがとうございます。

オリビア達がバーに向かうと、そこにはバーテンダーらしき男と話すリアムがいた。


「アルベールさん、調査のお手伝いに来ました。彼女は友人のクロエです」


クロエは軽く会釈をして、挨拶を続ける。


「クロエ・マルタンです。友人のオリビアが無理を言って申し訳ございません」


そうクロエが告げると、リアムは爽やかな笑顔を浮かべながら、お辞儀する。


「これはご丁寧に。リアム・アルベールと申します。探偵をやっております。いえ、こちらこそ、ご友人を巻き込んでしまい、申し訳ありません。マルタンさんもワトソンさんも自分達の無理のない範囲で調査をしてください」


はい、とオリビア達は頷く。

それを微笑ましく見守っている人物がいた。リアムは彼の存在に気づくと彼の紹介を始めた。


「この方はロイ・ジラールさん。ここのバーのマスターでもあり、このホテルの副支配人です」


「初めまして。ロイ・ジラールと申します。この度はこのような事件にお客様を巻き込んでしまったことをお詫び申し上げます」


申し訳なさそうに謝るロイを見て、オリビアは1つの疑問を投げかける。


「ジラールさんって、確か亡くなられた支配人と同じ苗字ですね」


「はい、亡くなった支配人であるリュカ・ジラールは私の従兄弟です」


「それは…お悔やみ申し上げます」


いえ、とロイは少し気まずそうに答える。


「どうかお気になさらないで下さい。こんなことを言うと不謹慎かもしれませんが、私とリュカは折り合いが悪くて、仕事以外の話をあまりしなかったんです。そのせいか、急に死んだと言われても実感が湧かなくて…」


ロイはそこまで言うと失礼、と口ごもった。

リアムは話題を切り替えようとオリビア達に尋ねる。


「そういえばワトソンさん達は今回何故こちらに?」


「私達、まだ学生で。就職活動が終わって、学生最後の思い出作りに来たんです。アルベールさんは、どうしてこちらに?」


「私の弟が久々に家族旅行に誘ってくれまして。といっても弟に急な仕事が入り、1人旅になったんですけどね」


「そうなんですね。アルベールさん、私達は年下ですし、畏まらなくても大丈夫ですよ」


「そうですか…いや、そうだね。では、お言葉に甘えて。君達も畏まらなくていいよ」


「ありがとうございます」


オリビアはリアムと親交が深まったと内心ガッツポーズをしながら、話を進める。


「弟さんと仲が良いんですね」


「どうだろう。最近はあまり話をしていなかったんだが…でも誘われたのは兄としても嬉しいよ」


少し照れたような笑みを浮かべるリアムにオリビアはときめいた。

ロイはその様子に気づき、笑みを浮かべる。


「調査中といっても、立ち話もなんですから、ゆっくりしていってください。宜しければ何か作りますよ。何がお好きですか?」


グラスを用意しようとするロイにリアムはやんわりと断る。


「いえ折角の御厚意ですが、一応これでも仕事中なので。でもワトソンさん達は私にお気になさらずに」


「ではソフトドリンクでも用意しますよ」


ロイにそう言われるとリアムは申し訳なさそうにお願いします、と頷いた。


オリビア達もそれに倣い、ソフトドリンクを頼んだ。

クロエはその様子を見て、リアムに問う。


「普段は、どんなお酒飲まれるんですか?」


そう尋ねられ、リアムは少しばつの悪い顔をした。


「いや、実はそのあまりお酒が強くなくてね。全然飲まないんだ。昔、会社で働いてた時は付き合いで飲むことはあったんだけどね。一杯で顔が真っ赤になってしまう」


(お酒に弱いアルベールさん、可愛い…)

オリビアは内心身悶えながらも、顔を出さないように、冷静を装いながら話を聞いた。

クロエはグラスに入った氷をストローでカラカラと回しながら、リアムにさらに尋ねる。


「元々、働かれてたんですね。どうして探偵になろうと思ったんですか?」


「それは…」


「クロエ!」


クロエの言葉にオリビアは制止の意を含めた声で友人の名を呼ぶ。その声にクロエをはじめ、驚きの顔を見せる。


「びっくりした…何?」


「そういえば、まだクロエのアリバイ聞いてないなと思って。午前2時から5時まで何していた?あと支配人との面識は?」


話題がそれたことにリアムがほっと安堵していたのをオリビアは見逃さなかった。原作を知っているオリビアはリアムが探偵になった理由が明るい理由ではないことを知っていた。


「そうね…アリバイとまではいかないとは思うけど、寝ていたわ。オリビアも多分その時間部屋から出てないと思う。支配人との面識はチェックインの時に見かけたくらいよ」


「マルタンさんも眠りが浅いのかい?」


リアムがそう聞くと、クロエは少し悪戯めいた笑みを浮かべて答えた。


「いえ、オリビアは昔からかなり寝言が凄いので。昨日はシュークリームに襲われる夢を見てたみたいですよ」


クロエはその時のオリビアの口調や動作を真似て、表現した。


「ちょっとクロエ!なにそれ、私覚えてないし。というか覚えているとか関係なく、そんな恥ずかしいこと言わないでよ!」


オリビアは顔を真っ赤にして、クロエに抗議する。リアムの方を向くと笑いを堪えるように俯いた。


「アルベールさんも忘れてください…!」


「いや、すまない。つい…可愛らしい夢だなと思って」


「可愛いって…もう」


対象はどうであれ、可愛いと言われたことに嬉しさを隠せない。

とはいえ、笑われたことは事実で、オリビアはふて腐れたようにそっぽを向いた。


「からかいすぎたね。ワトソンさん、この不躾な男をどうか許してくれないか?」


「…許してさしあげます」

(上目遣いで見上げるようにするアルベールさんも素敵だったし)


オリビアは自分の可愛げのない受け応えに内心ガッカリしながらも調査を再開することにしたのだった。

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