豪華寝台列車殺人事件 第4章4節
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「参ったな…」
アリエルは下戸だったようで、ワインを飲み干す頃には机に伏していた。
リアムが困惑していると、バーテンダーが申し訳なさそうな顔をしながら告げる。
「お客様。この女性の方は客室係の者が部屋までお連れしますので」
バーテンダーが告げると同時に1人の女性が入って来た。服装からして、恐らく駅員の1人だろう。
「エマール様。失礼致します。お部屋までにはお連れします」
リアムが手伝おうとすると、女性は大丈夫です、と言って、アリエルの腕を肩にかけ、立ち上がり、アリエルを運んでいった。
(いくら女性とはいえ、1人の人間を運ぶのは大変だろうに…)
容易く運ぶ駅員の姿を見送ったリアムは少し落ち着きを取り戻し、部屋に戻った。
部屋に戻ると、オリビア宛に送られた手紙を改めて開いた。
(少し特徴的な字だな…)
特徴的に書かれた文字。そして、異国の言葉で書かれた謎のメッセージ。
「これ以上、私の世界を壊すな。シナリオ通りに動かないのなら、私が動かしてみせる。定刻通りに来い…か。私の世界やシナリオとはどういうことなんだ?」
リアムには理解出来なかったが、セシルとおそらくオリビアもその意味を理解しているのだろう。
(きっとこれは私にも関係していることなのだろう…オリビア、君は一体何を知っているんだ?)
リアムは携帯電話を開き、オリビアの友人であるクロエに連絡をした。
「もしもし?」
「お久しぶりです。リアム・アルベールです。少しお伺いしたいことがありまして」
「あぁ、リアムさん!お久しぶりです。オリビアは元気ですか?」
クロエの質問に一瞬躊躇うも、リアムは冷静に回答を逸らした。
「ええ、オリビアが今アクアラメールに出掛けているんですが、そちらにオリビアの親戚や友人…恋人などはいらっしゃいますか?」
リアムは恋人というワードを口にする時に思わず声が硬くなった。
クロエはそんなリアムの様子には気づかずに、呑気な声で返答をした。
「え?そうですね…いなかったと思いますけど」
「そうですか。ありがとうございます。急な出掛けでしたので、少し気になりまして」
リアムが告げると、クロエは電話越しに笑った。
「あの子、突拍子もないことをしますから…ご迷惑をおかけしてるでしょう?ごめんなさい」
「いえ、そんなことはないですよ…彼女にはいつも助けられていますから」
本当ですか、と笑い混じりに聞くクロエにリアムは頷く。
「ええ、本当に…彼女は私にとって唯一無二の助手ですよ」
リアムは初めてオリビアと会った頃は想像もしなかった。自分がこんなに彼女を必要とすることを。
リアムは目を閉じ、オリビアの笑顔を思い浮かべた。
リアムは携帯電話を強く握り締めて、改めてオリビアの無事を祈るのだった。