豪華寝台列車殺人事件 第4章2節
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リアムはネージュに後押しされて、気合を引き締めて、探偵事務所の扉を開いた。
しかし、そこにオリビアの姿はなかった。
それどころかオリビアの私物も全て無くなっており、オリビアの机には1つの手紙のみが残されていた。
オリビア宛に届いた手紙。差出人は不明だった。慌ててリアムはその手紙を見る。
『明日16時までにアクアラメールに来い』
と書いてあった。そして裏面には見たこともないような異国の言葉で何かが書かれていた。消印を見ると、速達で昨日出されたものだった。混乱したリアムは弟の存在を思い出し、連絡する。セシルはこちらに来るそうだ。
おそらく、オリビアは隣国であるアクアラメールに向かったのだろう。しかし、荷物も何もかもが消えていたことに違和感を覚えた。そして、定時を過ぎてもオリビアは来る気配がなく、連絡をしても音信不通のままだった。
リアムはパソコンを開いて急いでアクアラメール行きの寝台列車のチケットを取る。
急な予約の為、豪華寝台列車のメモワール号しか取れなかったが、オリビアの安否が掛かっている為、背に腹はかえられなかった。
チケットを取り終わり、駅に向かう準備をしていると、扉が勢いよく開いた。
普段、家族でも見たことのないような焦った顔でセシルは事務所に飛び込んで来た。
「オリビアがどこへ行ったか分かったか?」
リアムは頷いて、手紙を差し出す。
セシルは文面に目を通す。裏面の文字を見て、セシルの顔は青ざめた。
「何だ、セシルは読めるのか?」
セシルは少し返答に迷い、少し間を置いた後に静かに頷いた。
「『これ以上、私の世界を壊すな。シナリオ通りに動かないのなら、私が動かしてみせる。定刻通りに来い。』と書いてある」
「どういうことだ?オリビアは…」
「これを書いたやつにとって不都合な動きをオリビアはしてると見做されたんだよ。とにかく兄さんは早く行って。私はここで何かあった時に動けるように待っているよ」
リアムは完全には事のあらましを理解出来ていなかったが、セシルに軽く礼を言うと、早急に駅に向かうのだった。