リデル家殺人事件 第3章8節
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警察が調査を開始し、調査を自由にすることが出来なくなった。
しかし、アルノーの強い要望により、警察の監視下のもと、一定の時間のみ現場に踏み入れることが出来るようになった。
今はその調査時間だ。
オリビアはふと、テープレコーダーの前で立ち止まった。
「リアムさん…このテープレコーダー録音機能があるんですね。ちょっと聞いてみませんか?」
断る理由もなかったリアムは頷いた。
オリビアは慣れた手つきでレコーダーの録音再生を押す。
「慣れているんだな」
リアムはオリビアの所作を見て、そう呟いた。オリビアは少し恥ずかしそうに頷く。
「父がこういうアンティークなものが好きで、家に似た型のテープレコーダーがあるんです。4時間くらい録音できるんですよ、これ」
「それは凄いな」
リアムが録音停止ボタンを押したのは午前7時頃。もしかしたら、録音が回っていたら午前3時以降の音声が残っているかもしれない。
ガタンと何かが落ちた音がした。おそらくテープレコーダーの側に落ちていた辞書だろう。運良く、そこから再生が始まった。僅かな寝息が聞こえる。おそらくシャルロのものだろう。しばらくして、アラームの音がなった。おそらく午前4時になったのだろう。布が擦れる音がして、人が動く音がした。足音が遠くなっていく。ウォーターサーバーを利用する時にする水の音。そして、また足音。そして椅子に腰掛ける音。そして、暫くして男の呻き声がした。そして、いくつもの本が落ちた音。
オリビアは息を呑む。シャルロが殺された瞬間だ。リアムも黙ってその場で録音した音声を聞く。
一瞬の静寂の後、何かが動く音がした。
その後、小さな足音が聞こえた。そして、扉がゆっくりと開き、閉まった。
「リアムさん…今の音って」
「ああ…おそらく、犯人だ」
そして、また少し経つとネージュの悲鳴。
ネージュ曰く、見つけたのは午前5時頃。
シャルロが死んだのは午前4時から5時の間。しかもシャルロが亡くなった時、犯人は現場に居たのだ。
さらに少し経つとネージュとシリル、そしてリアムの声がする。暫くするとエミリアの悲鳴が聞こえた。そして、1人、また1人と部屋を出て、静寂が訪れた。確かこれが午前6時前。
次に扉の音がした。最初、リアムは自分が調査に入った時の音だと思った。しかし、それが違うと思ったのは、その荒々しい足音と何かを探すような物音だった。
その人物は仮眠室に入ってきた。
荒い息遣いと共に、何かを探すような物音。
そして、周辺を探った後、書斎に戻る。
リアムとオリビアは、ただ耳をすませた。
金庫のようなものを開けようとして、開けられないことに苛立っているのだろう。
「クソ!なんで開かないんだよ!アイツがアレを盗んだに違いないのに…」
おそらく犯人はテープレコーダーの録音機能に気づいていなかったのだろう。遠くから聞こえた音は聞き覚えのある声だった。
「オリビア、証拠が出た。犯人確保に急ごう。私の側から離れないでくれ」
「はい!」
リアムとオリビアが犯人を探そうとしたところ、女性の悲鳴が聞こえたのだった。