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高級ホテル殺人事件 第1章3節

閲覧いただき、ありがとうございます。

「一応聞きますが、昨夜…いえ今朝ですかね。午前2時から5時まで何をされていましたか?」


「寝ていました。部屋は2人部屋で友人と寝ていました。私は眠りが比較的浅い方なので、物音がしたら気づくと思うのですが、気づかなかったですね」


「そうですか。これから一応、滞在している方々に任意で話を聞くので…ご友人のお名前は?」


「クロエ・マルタンです。あと1つ上の階にアリス・デュボアとエマ・シモンという友人が相部屋で泊まっています」


「分かりました。ありがとうございます。では私は他の方々に聞き込みをします。ワトソンさんは一度部屋に戻られた方が良い。あなたの先ほどの様子を見る限り、ご友人はとても心配しているでしょう。私は10階の1006号室に宿泊していますので、何かあればホテルの内線で繋いでください」


「…そうですね、そうします。ありがとうございます」


オリビアは憧れの人と別れ、部屋に戻ると、クロエが形相を変えて、こちらに抱きついてきた。

普段、スキンシップを嫌う友人がこういう行為を取るということは余程心配をさせたのだとオリビアは少し申し訳なく感じていた。


「…オリビアのバカ。心配したのよ、まさか地下室に行ったんじゃないでしょうね?」


「ごめんなさい、心配かけて。地下室には行ってないわ。地上階で探偵の方とお会いして…それだけよ」


ふとオリビアは、クロエの肩口から向こうを見た。そして、エマが横になっているアリスを心配そうに見つめていることに気がついた。


「アリス、どうしたの?」


「電話の時、余程ショックだったみたいで、オリビアが出かけてすぐに糸が切れたように眠ってしまったの」


「顔色真っ青だったものね…エマ、ただいま。アリスどう?」


クロエから離れ、エマとアリスに近づく。エマは弾かれたようにこちらを向く。


「オリビア…戻ってきたのね。あなたのことも心配していたのよ」


「ごめんなさい。それで、アリスは?」


「ぐっすり眠ってるわ。しばらくは起きないかも」


エマもぐったりとしている。気疲れだろうとオリビアは思った。殺人事件が身近で起き、友人が倒れ、寝込んでしまっている。友人の中でも1番の心配性であるエマは気が気じゃないだろう。


(エマはアリスと幼なじみだから余計心配なのかも)


「ねえ、クロエ。お願いがあるんだけど」


オリビアはふと先ほどリアムに言われた言葉を思い出し、クロエに話しかける。


「…私、オリビアがハムスターみたいな顔で見つめてくる時はろくなお願いじゃないことを知ってるのよ。だから断るわ」


「ハムスターみたいってどういうことよ。お願い、私の調査についてきてくれないかしら」


「オリビアは背が小さいからちょこちょこしてて、そう見えるのよ…調査って何?」


「事件の調査」


「はぁ?あんた正気なの?」


クロエは流石に呆れたと言わんばかりにベットに飛び乗る。オリビアは駄々をこねる子供のようにクロエの腕を掴み、離さない。


「正気だよ。このまま事件を放置することなんてできない。探偵さんと約束したの、1人では調査しないって」


「どこの刑事ドラマに感化されたのよ…それとも、その探偵さんとやらに何か吹き込まれたわけ?」


「そうじゃないわ。私、見つけたかもしれないの…こう天職ってやつかしら」


「そんなわけないじゃない…」


クロエはうんざりしたようにオリビアの顔を見つめる。


「あら、そうじゃないなんて分からないわ。…でも確かにクロエを危険に巻き込むことになるかもしれないし、無理にとは言わないわ」


掴んだ腕を離し、項垂れ、小さくなるオリビアを見て、クロエは大きなため息を吐く。


「あなたは頑固だから譲らないでしょう?1人で事件に突っ込んだら困るし、私が見ていてあげるわ」


「本当?クロエ、大好き!」


思わず抱きついてきたオリビアにクロエは、はいはいと背中を叩いた。

その様子を見て、エマの疲れの顔にも思わず笑みが浮かんでいた。


「2人とも相変わらずね。私はここでアリスを見ているから、2人は行ってきて。でも、くれぐれも危ないことはしないでね」


「もちろん。エマもアリスも気をつけて。何かあったらいつでも連絡して。外には出られないけれど電波はあるわけだし」


「そうね、そうさせてもらう。お互い気をつけましょう」


「今は18時ね…20時の夕食の時に一度部屋に戻るわ」


「わかった。気をつけて行ってらっしゃい」


そう言って、オリビアとクロエは部屋を後にした。

オリビアは不謹慎ながらも自分の胸の高揚を抑えることはできなかった。


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