リデル家殺人事件 第3章5節
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一部残酷な表現があります。ご注意ください。
リアムはオリビアに自宅で待っているように連絡した後、慌ててリデル家に辿り着いた。
シャルロは書斎で変わり果てた姿で亡くなっていた。ネージュは、大粒の涙を零し、シリルはそんな姉を宥めていた。
ネージュはシャロルの書斎から大きな物音に気づき、様子を見たところ、変わり果てた兄の姿を見て、慌ててリアムに電話をかけたらしい。
リアムがシャルロの遺体に近づくと、血に染まった口元からアーモンドのような匂いがした。青酸カリだ、とリアムは瞬時に判断した。そして足元にはウォーターサーバーから汲んだであろう水が入った紙コップが入っていた。そのコップを持つと、アーモンド臭が鼻孔をくすぐった。
(こんな離れても、分かるほどの匂いがするのにシャルロさんは、これを飲んだのか?)
それに青酸カリは口に含むと口内に激痛が走り、大量に飲むことは困難だ。現にシャルロの口元は血と水が混じり、シャルロのシャツは濡れていた。おそらく、体内に入れた水はおよそ半分くらいだろう。
「兄さんはリアムが来るのを反対していたけど、こんなことになるならもっと早くに調べて貰えばよかった…」
ネージュは咽び泣きながら、そんなことを口にした。
「シャルロさんは調査に反対していたのか?」
「ええ…警察も探偵もいらない。俺がなんとかするの一点張りで…私も躊躇ったんだけど、どうしても気になって兄さんの反対を押し切って依頼したの」
そうだったのか、とリアムはシャルロの遺体に目を落とす。
シャルロはもしかして、犯人の存在に気づいていたのだろうかとリアムは考える。
考察していると、金切り声を上げて、1人の女性が部屋に入ってきた。
「シャルロ!シャルロはどこなの!?」
「母さん、落ち着いて」
シリルに宥められた女性は母さんと呼ばれていた。察するにこの女性がエミリア・リデルなのだろう。かなり取り乱しており、尋常じゃない汗をかいていた。
シャルロの遺体を見るや否や、エミリアは意識を失った。シリルは慌ててエミリアを部屋に運んだ。
「ネージュ、とりあえず移動しよう」
シャルロの遺体の前で泣いていたネージュを励ましながら、リアムはシャルロの書斎から出て、客間に移動した。
「アルノーさんは、このことを知っているのか?」
リアムはネージュ達の父であるアルノーの所在を尋ねた。ソファに座り、お茶を飲むことで、少し冷静さを取り戻したネージュは小さく頷いた。
「私はしばらくシャルロさんの自室を捜索する。ネージュ、君は一旦休むといい」
ネージュは、また頷き、そして客間を後にした。リアムは溜息をつき、そして気合いを入れ直すように頬を軽く叩いた。