リデル家殺人事件 第3章4節
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その日の収穫は、脅迫状が本の表紙で作られたこと。消印の周辺地域の廃品回収に大量の本は捨てられていなかったこと。大量の本は犯人の手元にあるということが分かった。
滑り出しとしては順調だ。しかし、リアムには助手席にいるオリビアの様子が気になって仕方がなかった。
いつもは元気で明るく話が尽きないオリビアは何かを考えるように押し黙っていた。
「やはり、今日の君は何だか元気がないようだ。私で良ければ話してみてくれないか?」
車の停車中、リアムはオリビアの頬に触れた。リアムの指の間から、さらさらとオリビアの栗色の髪が溢れた。
オリビアは少し擽ったそうな顔をした。
「犯人像が全然見えなくて…このまま何も出来ずに何か起こったらどうしようかと思って」
今までだって、その可能性は大いにあった。しかし、オリビアは高級ホテルの一件からは原作の前知識があった。知っているのに知らない、この現状にオリビアはどうしようもない不安を覚えていた。
「そうか…確かに過去や未来を考えると現在が不安になることはある。でもこれは結末が決まっている小説ではないんだ。今からでも私達の手で変えられるんじゃないか?少なくとも君は今まで幾つものピンチを切り抜けてきたじゃないか」
オリビアを見つめるリアムの目は優しく穏やかだった。リアムも勿論不安になることは何度もあった。しかし、その度にオリビアが不安から抜け出させてくれたのだ。
「誰しも物語の主人公のように完璧には出来ないんだ。君は君らしく、君なりのペースで進んでいけばいいんだよ。何かあったら私が君の力になる」
オリビアの頬に触れるリアムの手から温かな体温を感じた。オリビアは徐々に落ち着きを取り戻す。
「リアムさん…」
「なんだい?」
今日の自分は変だ、とオリビアは思いながらも、無性にリアムに甘えたかった。
「どこにもいかないで…」
「行かないよ。私は君のそばにいる」
リデル家殺人事件が解決された後、オリビアはその先を知らない。後どれだけシリーズが続くのか、結末がどうなるかを知らない。
それがハッピーエンドなのかバッドエンドなのかも。
転生した自分だからこそ、感じる不安だった。
ただ、今はオリビアはリアムの存在を確かめたかった。
そして、次の日の早朝、午前5時頃。
リアムはネージュからの電話で目が覚めた。
ネージュの焦った声で意識はすぐに覚醒した。ネージュは心なしか泣いているように思えた。
「リアムどうしよう。兄さんが死んでいるの」