とある高校生のお話 後編
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前世のオリビアの幼なじみのお話です。
神楽翔太の幼なじみである神崎美桜は幼い頃から心臓が弱かった。そして、高校生の終わり頃には家よりも病院で寝泊まりすることが多くなってしまった。
生まれた日が同じと言うこともあり、母親同士の仲が良く、小さい頃からの付き合いだった。
翔太にとっての美桜は守る対象であり、妹のような存在だった。翔太は彼女が喜ぶことは何でもしたかったし、花言葉を調べる花束を見舞いに持って行くなど自分が普段しない行動を取ったりもした。
恋愛関係を疑われることも多くあったが、翔太は恋人よりも家族の方がしっくりきた。
翔太は、これからもずっと守ろうと思っていた。
しかし、そんな想いも虚しく、先日彼女は長い闘病生活の末、息を引き取った。
翔太は今、美桜の告別式に参列しているところだった。翔太はそっと美桜の棺に、一輪の花とリアム・アルベール探偵シリーズの最終巻を入れた。
ずっと病気のせいで自由がなかった美桜。
美桜の顔を眺めながら、翔太はやるせない気持ちになった。
(まだ、これからだったじゃないか)
美桜が火葬された後、翔太は会食に欠席し、1人屋上で黄昏ていた。
(神様は意地悪だ。美桜は人生を謳歌できたのだろうか…)
気づけば翔太は手を合わせて、祈りの姿勢を取っていた。
「もし、願いが叶うのなら…頼むよ、神様。美桜の願いを叶えてくれ。来世では幸せになってほしい。リアム・アルベールの助手でも何でもいい!お願いだ!」
最後は祈りというより、懇願だった。
翔太の悲痛な叫びは虚空に消えた。
(いつからだろう。これが美桜の願っていた世界だって気づいたのは)
翔太は自分は第二の人生が始まっていたことに気づいた。
物心ついた頃から感じていた違和感。それが転生したからと結論付いたのはそう遅くはなかった。
(どうして美桜じゃなくて自分がこの世界に?)
最初は、また神様の悪戯を恨めしく思ったものだった。
しかし、それはある時、感謝に変わった。
ある日、一本の電話がかかってきた。
それは、かつて美桜が大好きだったリアム・アルベールからだった。
「もしもし、急にどうした?」
「ああ、ちょっと相談に乗ってもらいたくてな…実はこの前、居合わせた事件で出会った女子学生が私の助手になりたいと申し出てきてね…断ったんだが、多分また申し込んでくると思う」
どうしたらいい、と尋ねるリアム。
翔太はリアムが起こっている出来事に目を丸くした。
(探偵助手…?まさか)
「事情は分からないが、悩むってことは悪い人じゃないんだろう?私はいいと思うよ。賛成だ」
いや、でも、と口籠るリアムを強引に説得し、次申し出たら承諾しろ、と言って受話器を切った。
翔太は美桜も生まれ変わって、この世界に来たのかもしれないという可能性に胸を躍らせていた。
その一縷の望みはオリビアと会い、話して確信に変わった。
「オリビア様はいつから探偵を目指すようになったのですか?」
「私が探偵を目指した理由ですか?」
「ええ、兄が探偵助手を強く希望する女性を雇ったと聞いたもので。余程、探偵業に興味があったのだと思っておりました」
オリビアは当時を思い出したのか、苦笑いをする。
「かなり昔からです。初めは推理小説でした。探偵が様々な人と関わって謎を解いていくのが面白くて。その当時の私は身体が弱く、推理小説が私の世界の全てでした」
翔太、もといセシルは確信した。
オリビア・ワトソンは神崎美桜の生まれ変わりだと。
リアムはかなりオリビアを可愛がっている、それは助手としてだけではないように思えた。
(暴走する美桜を止める兄弟になりたい…っていう願いも叶うのかもな)
セシルは自分の正体を打ち明けるか迷い、やめた。その代わりに先日見つけた珍しいローズティーをオリビアに出すことにした。
イエロードットの薔薇は美桜に贈った最後の花でもある。
(棺の中じゃ気付かないよな。それに美桜は花言葉にも興味がないし)
そう思いながらオリビアに差し出すと、彼女はどこか郷愁に浸ったような表情をして、紅茶を口にした。その表情を見たセシルは思わず微笑んでしまったのだった。
イエロードットの薔薇
「君を忘れない」
第3章、随時更新致します。
暫くお待ちください。




