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高級ホテル殺人事件 第1章2節

閲覧いただき、ありがとうございます。

しばしの沈黙が流れる。

リアムはこちらを疑うように、じっと見ている。


「あの、殺人事件が起きたって聞いて…居ても立っても居られなくて、その」


「何も持たずにどこかに逃げるつもりだったのですか?外は土砂災害の影響で遠くまで出られないはずだ」


「いえ、逃げるつもりはなかったのですが…信じられなくて」


この世界が小説の世界だということは、ということは口にしなかった。


「それで地下室に行って、確かめようと思って…」


「遺体を?亡くなられた方に面識があったのですか?」


「いえ…」


彼は少し呆れた顔をしてこちらを見る。疑いの色はまだ消えない。


「心覚えがないのに、遺体を確認しようとしたのですか?」


「はい…」


「失礼かもしれませんが、お嬢さん。その行動は危険ですよ。私は動機が分からないから、あなたをまだ犯人扱いはしないが、怪しい行動だ。一方でもし、あなたが犯人じゃなければ、真犯人に狙われるかもしれない」


「そうですよね。迂闊でした。では、あなたはどうして部屋から出られるのですか?」


答えは分かっていたが、あえてオリビアは口にする。


「私は…名ばかりかもしれませんが、探偵なので。先ほどの電話でフロントの方から許可をいただき、特別に調査をすることになりました。この嵐と土砂災害で警察もすぐには来れないみたいですし、現場保存も兼ねて」


「そうなのですね。折角なので自己紹介を。オリビア・ワトソンと申します。調査のご迷惑及びお騒がせして申し訳ございませんでした」


「いえ…私はリアム・アルベールです。こちらこそ初対面の方なのに不躾な態度を取ったことをお詫び申し上げます」


そう言いながら彼はラフな格好には似合わない丁寧なお辞儀をした。

その一方で彼女は憧れの人に会えた喜びと理由の分からない興奮でいっぱいだった。


「あの、こんなこと言ったら、さらに疑われるかもしれないのですが…私にアルベールさんの調査をお手伝いさせていただけませんか?」


興奮に身を任せ、思わず彼女は本望を口にする。

その言葉に彼は疑いより戸惑いの表情を見せた。


「え?いや、それは」


「無茶なお願いなのは存じています。でもお役に立ちたいんです。ここで出会ったのも何かのご縁ですし、それにこのまま何もせずにいるのが不安で。邪魔にならないように努めますので…お願いします!」


彼女の迫力に気圧され、彼は思わず一歩後ずさる。


「これ以上の被害が出ないように、あなたには誰かと一緒に部屋にいてほしいのですが」


「…嫌です。どうしても事件の解決の手伝いがしたいです。遊びじゃないことは分かっています。アルベールさんに断られても、私1人で調査をします。そして情報を共有します。必要ないのかもしれませんし、私の自己満足になりますが」


「お手伝いしていただけるのは有り難いですが、もし何かあったら…」


「こう見えても私、鍛えているんです。東の国から伝来された技を習っていて…それに部屋に引きこもっていても、危険じゃないわけではありませんから」


梃子でも動かない彼女の口ぶりに彼はお手上げといった形で左手を上げた。


「分かりました。でも出来るだけ単独行動は控えてください。私でも一緒に来た方とでも良いので誰かと共に調べてください。そして危険だと判断したら、すぐに逃げるように。私も情報を共有するので」


「分かりました。ありがとうございます、アルベールさん」


「…こちらこそ、よろしくお願いしますね、ワトソンさん」


こうして半ば強引に彼女は見習い助手として活動を始めることになったのだった。

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