財閥企業殺人事件 第2章12節
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一部残酷な表現があります。ご注意ください。
ノアは両親と8つ離れた妹の4人家族だった。初めは何不自由ない生活を送っていたが、ノアの父が経営するゴーディエホールディングスが傾きだし、歯車が狂い始めたのだった。
ノアの父は、とにかく真面目で愚直だった。
家庭の為、会社の為と身を粉にして働き、1つの起死回生の案に辿り着いた。
しかし、ある会社の確立により、ゴーディエホールディングスは倒産した。それだけではなく、起死回生の案も恰も自分達の案のように、その会社は発表した。
やがて、ノアの父は過労で倒れ、母も病に倒れた。そして、ノアは両親の分まで働こうとその会社で手伝いを始めたが、努力も虚しく、妹を養う余力の亡くなったゴーディエ家は妹を孤児院に渡すことにしたのだった。
家族を誰よりも愛し、過去の思い出に浸り、現実を受け入れられなかったノアは買収した会社であるアルベール社に恨みを抱くようになった。
2年前、茹だるような夏の日。
ノアは有休を取り、母の看病の後、庭に生い茂った雑草の処理をしていた。
すると、偶然にも当時のアルベール社代表取締役であるアランが目の前を横切った。
ノアには気づいておらず、何かを考えるように旧本社ビルがある道へ進んでいった。
ノアは自分が恨んでいる会社のトップに立つ男が何を思っているのか気になり、ついていくことにした。
アランは旧本社ビルを一通り見終わると、屋上に辿り着き、煙草を吹かして、黄昏ていた。
屋上の扉の陰に隠れていたノアの胸には沸々と怒りが込み上げてきた。
(俺から全てを奪ったやつは、夕方のまだ勤務時間に煙草を吹かして黄昏てやがる。俺の親父は休む暇もなく働いたというのに)
アランが着ている皺1つないスーツにも、ノアは怒りを覚えた。
(立派な家で家族が自分の帰りを待っている。そして幸せな生活を送っている。俺はもう親父にも妹にも会えないのに)
唯一そばにいる母は意識混濁があり、会話もままならない状態だった。
表面上は気さくな性格を演じていたノアは自分の心情を打ち明ける友人もおらず、孤独だった。
ノアの父が最期まで生きようと足掻くのを見ながら、死に目を看取ったことを思い出したノアは持っていた軍手をはめて、アランを屋上から突き落とした。
瞬間、ノアはアランと目があった気がした。
そして、どこか悲しそうな顔をしていた。
(なんだ、その目は)
鈍い音でアランが地面に叩きつけられたことを感じたノアは急いで証拠を消した。
そして、靴を脱がせて屋上の手摺に置いた。
建物から離れる前にノアはアランの遺体に近づいた。無機質な表情をしたノアは軍手を外しながら、アランを見つめる。
自分が恨んでいる会社のトップを殺めたにも関わらず、ノアの気分は晴れるどころかどんどん暗くなっていった。今度こそ本当に全てを失ったような孤独感に苛まれた。
釈然としない想いを抱えながら、ノアは旧本社を後にした。




