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財閥企業殺人事件 第2章11節

閲覧していただき、ありがとうございます。

調査開始から3日目。

メアリーをセシルに任せたオリビアはリアムとハリーの元へ向かった。


(今日はハリーさんがノアさんと口論になる日だわ)


オリビアは1人静かに覚悟を決める。

何が何でもハリーとノアの口論を止めなければ、ハリーはノアに殺されてしまう。


ハリーの研究室に着き、リアムは扉を叩く。

しかし、鍵が解除される様子がない。

リアムは首を傾げ、ハリーに電話をかける。


「…応答しないな。不在か?」


リアムは眉を顰める。

オリビアの不安は高まるばかりだった。


「リアムさん、ハリーさんを探しましょう」


「ああ…そうだな」


リアムはオリビアの勢いに負けて、頷く。

その表情はどこか困惑しているように感じ取れた。

そんなリアムの様子にオリビアは声を大にして告げる。


「…リアムさん、確かに探偵に私情は不要です。でもリアムさんはリアムさんのやりたいようにやればいいんです。私はいつだってリアムさんの味方です!」


この事件はリアムにとって身内の事件だ。探偵として調査に私情を挟みすぎるのは良くないと、リアムは自制していた。

それのせいか、いつにも増して勘が鈍り、次の行動に踏み出せずにいた。

オリビアはそのリアムの躊躇に気づいていた。


(探偵業に真摯に向き合うリアムさん。でも調査という名目だけでは犯人どころか関係者はきっと口を割らないわ)


オリビアがそう告げるとリアムは、はっとしたような表情を浮かべた。


「そうだな…ありがとう、オリビア」


オリビアはリアムの手を握る。リアムの手はオリビアが思うよりずっと冷たかった。


オリビアは硬く大きいリアムの手から、リアムの緊張が読み取れた。そして、強くリアムの手を握りしめた。


「大丈夫です。きっと私が守ってみせます」


オリビアは強い意志を据えた目をして、リアムを見つめる。リアムは少し驚いているように見えた。


「リアムさん、行きましょう!」


オリビアは、そのままリアムの手を引いて研究室から出た。ハリーを探すのに夢中だったオリビアはリアムの耳が少し赤らんでいたことに気がつかなかった。



(原作では確か旧本社ビルで殺されたはず…ハリーさんはどこにいるのかしら)


旧本社に着き、リアムとオリビアは周囲を見渡す。原作では旧本社ビルにて殺された、としか書かれていなかった為、オリビアもどこでハリー達が揉めているのか知らないのだ。


オリビアは居ても立っても居られず、リアムより先に車から一足先に降り、旧本社ビルの周辺にハリー達がいないか探した。そして、ふとオリビアは上空を見上げた。

すると屋上で僅かながらに影が動いたように見えた。オリビアはその瞬間、屋上へ向けて駆け出した。


「オリビア、どこへ行くんだ!」


少し離れたところから、慌てて声を上げたリアムの制止も待たずに、オリビアは建物の中に入る。

オリビアは屋上の扉の前まで息も切れ切れに辿り着いた。

扉の先から何やら声がした。


「ノアさんの言い分も分かります。俺には計り知れないくらい辛かったのも…でもこんなことしても何の解決にもならない」


「…」


ハリーの声だった。相手は一切言葉を発しておらず、ハリーが一方的に喋っていた。

オリビアは扉を開けて、ハリー達の元に駆け寄る。


「ノアさん、いい加減現実を受け入れるべきだ。貴方はそんなところで燻ってたらダメだ」


(まずい…!)


オリビアが近寄ると、そこには明らかに険悪なムードが漂っていた。

ハリーとノアはオリビアに気づいていない。

オリビアからはノアの表情は伺えない。

ただゆっくりとハリーとの距離を近づけていた。


「ハリー。お前は本当に何不自由ない家庭で育ったんだな。お前の言ってることは正しいよ。でも正義を貫いても世の中は非情なんだ…今からそれを教えてやる」


ノアは一気にハリーとの距離を詰める。

ハリーはノアの突然の行動に不意を突かれ、たたらを踏んだ。

ガシャンと手すりに身体を打ち付ける強い音がした。


「ノアさん…お願いだ!まだいくらでもやり直せる」


「やり直して何になる?俺にはもう何もないんだ」


ノアはハリーの首を絞め上げる。

オリビアはノアの肩口からハリーの苦悶の表情を見た。


「ダメっ!」


オリビアはその場に飛び出し、咄嗟にノアの背後から抱きつき、手すりのそばから離そうと反対側へ重心を置く。本能的に行ったことだった為、オリビアはその後のことを考えていなかった。

ノアは突然のことで、上手くバランスが取れず、オリビアのされるがままになった。

鈍い音と共にオリビアとノア、ハリーは後方に倒れこむ。


オリビアは鈍い痛みを感じながら、意識を手放した。意識を手放した後もオリビアの手はノアの身体を掴んで離さなかった。


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