高級ホテル殺人事件 第1章1節
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本当にそれは唐突に起こった。
1日目はホテルに着いて、近辺を散策しながら、平穏に過ごしていた。
雨足が強まり、オリビア達が夕方に帰宅してすぐに土砂崩れが起こり、彼女達は閉じ込められ、大騒ぎになった。支配人が宿泊客に謝りながら、対応していたのを覚えている。
さらなる異変は2日目の朝からあった。
スタッフが慌ただしそうにしていたのは感じたけれど、その理由は支配人の不在だったらしい。
そして状況が大きく一変したのは、2日目の昼。
土砂災害があり、外に出れず、ゆっくりしようということになって、ホテル内を散策していたオリビア達は、ホテルのスタッフに突如部屋に戻るよう指示された。
ホテルは何部屋もあるが、昼間ということもあり、出かけている宿泊客が多く、数少ない滞在客は訳も分からぬまま、部屋で待機していた。
現在、2日目の夕方になって内線でフロントから連絡があった。
「アリス・デュボア様のお部屋でしょうか?」
「はい。あ、でも私は友人のオリビア・ワトソンです。部屋で待機ということだったので、友人達と集まっていて…アリスに代わりましょうか?」
「そうだったのですね。はい、お手数ですがお願い致します」
フロントからの電話を受け取ったアリスは会話をしていくうちに、みるみる表情をなくした。
「アリス?どうしたの?顔色悪いよ」
心配になったエマはアリスが電話を切ると同時にアリスのもとへ向かう。
「…今、フロントから連絡があって。2つのことを言われたの。1つは今、嵐が来てしまっていて、土砂崩れの復旧が遅れて、今日も外に出られない。出先の人は今日も別の系列ホテルに泊まるみたい。それで、その2つ目が…」
アリスは口ごもる。心なしか彼女の瞳は潤んでいる。思わずオリビア達も息をのむ。
「ひ、人が…死んで…しかも殺されていたらしいの」
「…え?」
思わず、友人達で顔を見合す。人が殺された?嵐の中、閉じ込められた?
途端、オリビアは何かが頭をよぎる。
(まるで小説のような出来事ね…小説?)
“小説みたい”そのワードを頭に浮かべた瞬間、電光のように様々な記憶が蘇った。
「嘘でしょう…」
(これは私がかつて愛読していた推理小説の世界かもしれない)
オリビアは弾かれたように立ち上がり、扉の方に向かう。
「ちょっと!オリビア、どこに行くの?部屋で待機って言われたじゃない!」
「ごめん、すぐ戻るから!どうしても確認したいことがあって」
クロエの制止を払いのけ、オリビアは部屋から出た。
(推理小説でこの事件の詳細は描かれてなかった。でも探偵として初めて遭遇した事件で、グリーンフォレスト地区のホテルロイヤルジラール、その地下室で支配人が…)
地下室を目指し、一目散に駆けていく。
地上階に着いた時、1人の男性が驚いたようにこちらを見る。
「…君はこのホテルの人ではないですよね。そんなに慌ててどうしたんですか?」
「…!」
彼女はその男性と会った瞬間、全身がざわめくような感じを覚えた。
(主人公のリアム・アルベール!)
そう、それはかつてのオリビアが大好きだった推理小説の主人公だった。
そして、かつてのオリビアは願っていたのだ。
―いつかリアム・アルベールの助手になりたいー
と。