財閥企業殺人事件 第2章3節
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リアムが事件のあらましを話すのをオリビアは黙って聞いていた。
「2年間、ずっと調べてきた。社員の福利厚生問題、買収した企業との折り合い…アルベール社には様々な問題が隠されていた」
恨まれることもあったのだろう、とリアムは調査した書類に目を通して、告げる。
オリビアはふと、疑問を投げかける。
「お父様は何故、旧本社に行かれたのでしょうか?」
「どうやら旧本社を改装して、何かの施設を作ろうとしたらしい」
オリビアはふと小説の記憶を辿る。
アランが旧本社に向かった理由は詳しくは記載されていなかった。ただ、アランは自分の意志で旧本社に向かったとは記載されていた。
「書類上の調査はあらかた終えたんだ。後は弟に頼んで、夏期休暇中で人が少ない今の時期に現場に改めて行こうと思ったんだ」
なるほど、とオリビアは頷く。
リアムはオリビアを一瞥し、溜息をついた。
「これは私の私情もある。他殺というのはあくまで私の勘だ。私事に君を巻き込みたくなかったんだが、どうやら君はそうではないようだね」
オリビアはもちろん、と言わんばかりに強く頷く。
「私はリアムさんの助手です。どこまでもついていきます…そのご迷惑でなければ」
どこか後ろめたい気持ちがあったのかオリビアは口を窄める。
その様子を見て、リアムは少し困ったように笑った。
「迷惑ではないよ。君に隠し事をしていたのはそういう意味ではないんだ。君さえ良ければ、私の調査に付き合ってくれないか?」
オリビアは終始自分を気遣うリアムの態度に憧憬の意を感じながらも、少し寂しく感じるのだった。
「来週の土曜日にアルベール社に向かう。オリビア、よろしく頼むよ」
オリビアは自分の感情を振り切るように元気よく返事をするのだった。