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財閥企業殺人事件 第2章1節

閲覧いただき、ありがとうございます。

アルベール社。

それはこの国で名高い財閥企業だった。

衣食住全てに関わる、あらゆる商品を開発し、自国だけでなく他国にも販売していた。

誰もが一度は憧れる企業としても有名であり、就職関連の雑誌では必ず目にしないことはなかった。

そんな一流財閥企業は2年前、とある事件を起こした。


それは夏の暑さも慣れてきた頃だった。

当時の代表取締役であるアラン・アルベールが急死したのだ。原因は旧本社ビルからの転落死であった。公にされた情報はそれだけであった。


これを受け、次期代表取締役であったアランの長男は辞職の旨を告げて、行方をくらませた。現在は次男であるセシル・アルベールが代表取締役を務めている。


誰もが憧れる一流企業の闇を感じる出来事だった。

月日が経ち、その出来事は大衆の記憶から薄れ、過去の出来事になりつつあったのだった。


20××年9月 リアム・アルベール探偵事務所。


「夏期休暇ですか?」


オリビアはリアムの言葉に首を傾げた。


「ああ、君が入所して以来、長期休みを取って貰っていなかったからね。今回の事件もひと段落したことだし、来週の土曜日から3週間、休んでくれ」


年始のホテルロイヤルジラールであった事件を皮切りに何かと事件が舞い込み、リアムとオリビアは長期休暇どころではなかった。

さらに、初夏に社員旅行と銘打って行った先で事件に巻き込まれ、旅行気分を味わうどころではなかったのだ。


「その間、事務所自体お休みですか?リアムさんはいつお休みをいただくんですか?」


オリビアは自分だけの長期休暇は申し訳ないと思い、尋ねる。

それを察したのか、リアムは苦笑いして返す。


「一生懸命頑張っている頼もしい助手さんには、ちゃんと休んでもらわないとね。大丈夫、私も少し時期をずらして休みを取るよ」


リアムの言葉にオリビアは少し納得がいかない様子だった。

なぜなら、オリビアはリアムが隠していることを知っていたからだ。


(今回の事件が終わった後のエピソードは、確かリアムさんにとって一番大事な事件と向き合う話だった。きっと夏期休暇中にリアムさんは、この事件と向き合う気なんだわ)


オリビアは、ホテルロイヤルジラールでの事件は簡潔に書かれていた為、詳細は知らなかったが、その後の出来事は知っていた。


時折、リアムが驚くような鋭い考察を出すのは、予備知識あってのことだった。


「…リアムさん、お休みは嬉しいです。でも私ひとつ聞きたいことがあるんです」


「なんだい?」


いつもとは違うオリビアの会話のトーンにリアムは眉を顰め、話を促した。


オリビアは一瞬躊躇する。

この事件はリアムにとって一番重要な事件。第三者が介入していいのだろうか。 ましてや既に犯人も結末もわかっている人が横入りしていいのだろうか、と。


(でも…力になりたい)


オリビアは、ホテルロイヤルジラールの一件からリアムと行動を共にし、誰よりも探偵としての彼を見てきた。

だからこそ、真摯に事件に向き合いながらも、時折影が落とす彼の力になりたいと願ったのだ。


「リアムさん、私の夏期休暇中に大きな事件に携わろうとしてませんか?」


「…どうしてそう思うんだい」


リアムに境界線を引かれたことに若干傷つきながらもオリビアは話を進める。


「勘です。ホテルロイヤルジラールでの一件から、リアムさんと行動を共にして半年程経ちました。リアムさんは肝心な時や危険な出来事は私に隠す傾向がありますから…」


暫くの沈黙の後、リアムは降参とばかりに手を挙げた。


「君は一度言ったら聞かないからね。どうも私は君に隠し事をするのが苦手らしい…君の言った通り、私は来週からとある事件に本腰を入れて調査する予定だ」


「…とある事件とは?」


オリビアは、その事件が何かを知っているが、改めてリアムに尋ねる。


「2年前、アルベール社の代表取締役である

アラン・アルベールの死についてだ。私はこれは他殺だと考えている。最も警察は事故死と判断したんだがね」


「前から思っていたのですが、アラン・アルベールさんはリアムさんの…」


オリビアがそう尋ねると、リアムはどこか寂しげな表情を見せた。


「御察しの通りだよ。アラン・アルベールは私の実父だ」

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