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ニートが彼女に気に入られる為に修行してチートになったのを見せつけるには異世界に行くしかないだろう  作者: 三月うさぎ
第二章 此が有れば彼が有り、此が無ければ彼が無い
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14 駐輪場

「なに見てんだオッサン」


 駐輪場に出て行った俺は若造共をじっと見ていたら案の定声を掛けてきた。単細胞というのは言動が把握されやすいワンパターンなのだろう。


 全部で五人。仕事とはいえ特殊武器が無かったら絶対に関わりたくないだろうな。見て見ぬふりが正解かどうかはわからないが、注意する大人が減ったのは事実だろう。許せない気持ちはあっても正義感で注意して逆上された相手に暴力で仕事や生活に支障が出てもいけないし、行きすぎたら死亡事件になる場合もある。キレ易いというか行き過ぎた事件が多いのは嘆かわしい限りだ。


「なに無視してんだよ!」


 考え事をしていた時間が余程気に入らなかったのか俺はケツを後ろから蹴られた。見事に喧嘩キックがさく裂して俺はうつ伏せに倒れてしまった。


「ハハハハハ」


 倒された俺を見て全員で笑う若造。箸が転んでも笑えるんじゃないのかと思えるが自分の体幹の悪さが情けない。後ろから不意打ちで蹴られたとしてもよろけながらも踏ん張れよ。両手ついて転ばないようにこれから体幹鍛えよう。


 若造共からしたら、文句か喧嘩でも売りに来たかもしれない奴が目の前で黙り込んで妄想してたら返り討ちの結構の獲物になるだろうな。暇で暇で時間を持て余している感じの若造共にはおいしいイベントだな。


「泣いてんのか?オッサン」


 泣いてる?蹴られたくらいで泣いてたらニート卒業なんてできるかよ。と言いたかったがわざわざ自分がニートだった宣言はするほど愚かではない。しかし今日は妄想というか考え事が多い気がするな。まずは起き上がろう。今我に返ったが蹴られてから四つん這いで妄想してたら、そりゃ若造共も泣いてんのかと思ってしまうわな。


「おぉロデオ。あなたはどうしてロデオなの」


 訳の分からないセリフが頭上から聞こえてきたと同時に背中にズッシリと重い感触があった。若造の一人が四つん這い中の俺の背中に乗っているのだ。


 若造の足のポジションが悪くて背中が痛い。伏せてしまえば道路に挟まれて余計に痛いだろう。だったら四つん這いで耐えるべきか。小学生の時の組み立て体操じゃあるまいし、地面がアスファルトだから膝が痛いって。痛い、ホント痛い。


「痛いって!!」


 冷静に考えたら上に乗ってる奴を落とせば良いんだった。俺は身体を横にして上の若造がよろけて落ちそうになった時に立ち上がろうとしたが、よろけた若造の頭と俺の頭がぶつかり俺は頭を押さえながらまた駐輪場でうずくまった。


「痛ぇなぁ、なにすんだよ!」


 いや、こっちのセリフだし、お前が乗るのが悪いのだろうと思ったが言ってわかるならこんなことしてこないだろうな。


 うずくまっている俺はケツを蹴られた。蹴りやすいポジションにケツがあったのだろう。


「ごめんごめん、丁度良い位置にケツがあったら蹴りたくなるよね。蹴ってくださいと勘違いしちゃうよね。ってんなわけないだろ!誰がオッサンだ!てめぇらいい加減にしろよ!ニート舐めんな!」


「ニートなのか?」


「もうニートじゃねーんだよ馬鹿野郎!てめぇら群れてたら態度大きくなりやがってふざけんじゃねーぞ!この野郎俺が痔だったらどうすんだ!」


「痔なのか?」


「いちいちうるせぇ!元ニートを発狂させんじゃねーぞ!全国のニートが発狂したらこんなもんじゃねーんだぞ!!!ぬおぉぉぉぉぉぉ!」


 特殊武器をブンブン振り回しながら雄たけびを上げている姿は、今警察がきて事情徴収されたら俺が加害者の容疑がかけられるだろう。目撃者の証言でもこの人がいきなりニート万歳とか言いながら発狂してましたって言われるだろうな。


 我に返ったのは一人目の若造から“W”が出た時だった。


「なんだそれ。かかってこいよ」


 逃げも隠れもしないぜ掛かっておいでと言わんばかりにブンブン振り回す俺に対して立ち塞がった粋の良い若造の一人に特殊武器が炸裂したのだ。


 若造はその場にへたり込んで動かなくなった。


「てめぇ、ヨシヲに何した!ヨシヲは町内空手大会で……」


「うるへーーー!」


 倒れた若造の仇のように向かってきた二人目の若造にも特殊武器が貫通し、一人目と同じようにようにその場にへたり込んだ。


「ヤス!ヤス!こいつ!ヤスは町内の囲碁大会で……」


 剣道などしたことはおろか生で見たこともないがおそらくこんな感じなんだろうなという面の素振りを高速で繰り返し三人目の若造から面あり一本を十本くらい取った。


「おい、てめぇいい加減にしろよ」


 様子を見ながら吸っていたタバコを地面に捨ててボクシングの構えで対峙したが

「こんのぉヤニカスがぁぁぁぁ!なんでお前らヤニカスは鼻から煙出しながら毎度イキってんだよ!そういう成分が含まれているのか!?吸わない連中からしたら害でしかない煙まき散らしてしかも臭い!めっちゃ臭い!奈良の大仏さんが屁こいたより臭い!そんな迷惑考えないで毎日毎日僕らは灰皿の上で焼かれてヤニなっちゃうのか?あ!?極めつけがポイ捨てばかりしやがって!地球をなんだと思ってんだよ!俺が地球の代弁してやる。地球の真ん中のマグマでタバコの火点けたろか?その後マグマでポイ捨ての数だけ抱きしめてやろうかってな!」


「なんだとこの野郎。好き勝手言いやがって。どっからでも掛かって行くぜ!!」


 掛かってくる前にまた見たこともないがフェンシングのようにして特殊武器を相手の喉元に突き刺していた。あと一人。


「俺はタバコは吸ってないんだよ。いつもガムなんだよ」


 最後の若造はそう言いながらガムを地面に捨てた。


「ガムもだーーー!!」


 往年のミスターの豪快な空振りを思わせるフルスイングで最後の若造もその場にへたり込んだ。


 最初に倒れた若造から“W”が出てきて我に返った俺は、窓越しから見ていた曜子に頭の上に両手で大きくマルを作ってサインをした。


 五人全員分が出てきた“W”は全てバスケットボール程の大きさで透明人間がドリブルをしているかのようにピョンピョンとその場で跳ね続けていた。


 余談だが、人は頭上で大きく両手でマルのサインを出すとき足はガリ股で開いてしまうのだろうか。もしかするとその姿が本来の完成形なのだろうか。


 頬杖を付いて一部始終を見ていた曜子は呆れたような、だけど楽しめた、そんな感じの微笑で小さくオッケーのサインをくれた。


 窓越しで声が聞こえないからなのか、若造との一件が落着したからなのかわからないが、微笑む曜子のことを少し可愛いと思ってしまった。


「黙っていれば可愛いのかな……」


 曜子を見ながら自然と微笑んでしまった。


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