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警官の一人は刺身包丁でわき腹を刺されながらも、彼女の左手を離しませんでした。
その後応援のパトカーと救急車が到着し、彼女と刺された警官を乗せていきました。
あの若い警官の命が助かったことは、不幸中の幸いでした。
彼女は傷害及び殺人未遂で刑務所に投獄され、裁判で有罪判決を受けました。
当分塀の外に出てくることはないでしょう。
安堵している私の耳に、ニュースが飛び込んできました。
彼女が刑務所内で自殺をしたというニュースです。
私は本気でほっとし、少し悲しみ、ある種の虚脱感に襲われました。
なんと言っても彼女は、かつて私が本気で愛した女であり、その後は最上級の恐怖対象になった女なのですから。
彼女が死んだからと言って、私の日々の営みに大きな変化はありません。
朝起きると階段を降り、居間へと足を向けました。
私の母が台所にいて朝食を作っていました。
「おはよう」
そう言った後、私はなにかの違和感を覚えました。




