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「私だけを見ていてね。ずっと」


私の彼女はそう言うのが口癖でした。


大げさでなく、何万回聞いたかわからないほどに。


私は彼女を愛していたので、物理的肉体的浮気をするつもりは全くありませんでした。


それでもちょっとした精神的な浮気までも、とめることは出来ませんでした。


ちょっとした精神的な浮気とは、町でとても可愛い子に会ったとき、ものすごくセクシーな女性を見たとき、などなど。


――おっ、なかなか可愛い子だな。


――うわっ、巨乳なのにやけに露出の高い服を着ているじゃないか。


――よし。今の風で女子高生のパンツが見えたぞ。


と言った、健全な若い男性であれば、ついつい見てしまって当然である程度のことです。


しかし彼女はそれすら許さなかったのです。


二人でいるときに、ふとそんな女性に目がいくと、見たのはほんの一瞬でありしつこく凝視しているわけでもないのに、彼女はそれを目ざとく見つけては烈火のごとく怒るのです。


その程度なら嫉妬心の激しい私を愛していてくれている女性と言うことにもなり、私にも非があることなのですから、強く反発したり彼女に嫌悪を感じたりはしません。


ところが実際はそれだけには留まりませんでした。


町を歩けば出会う女は可愛い女や綺麗な女ばかりではありません。


私の個人的感覚を基準にすれば、思わずトラウマになってしまいそうなほどの悲惨な容貌の女性や、冗談でやっているとしか思えないぐらいに趣味の悪い服を着た女性にも会います。


まれにではありますが、突然大きな声を発する女も見たことがあります。


可愛い女性や綺麗な女性とは全く意味合いが違いますが、失礼にならない程度の短い時間なら、そう言った女性にも当然のことながら目がいきます。

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