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2話 俺はやる。真のゲーマーとして

 並んでいた行列を城門に押し込み、俺たちは装備を点検し襲撃に備える。


俺もゲームの知識を全力で駆使して、門番と街から出てきてもらった衛兵に指示を伝えた。

「いいか。軍勢の前の方は、魔法の耐性がない雑魚ばっかだ。魔法を使えるやつは、城壁に登って上から魔法を撃ちまくれ!魔力が切れたら上からある程度重さのあるガラクタを落とせ。それだけでも結構効くはずだ。


その後はある程度戦闘が出来るやつで総攻撃をかける。敵の使う武器のリーチは短い。だから槍で戦え。使えないなんてやついないな!?」


 魔法を使える人、戦闘が出来る人と大雑把に兵種を分け、陣形を整える。魔法を使える人とその他大勢は上からの弾幕担当だ。


すでに城壁の上には、弓矢と俺の指示で集められた重いガラクタが運び込まれている。俺とその他10名で構成された特攻隊は、今は閉じられた門の内側で待機していた。


永遠とも思える長い時間の後、とうとうその時がやってきた。

門の隙間から見えるゴブリンを主とした多種多様な魔物の大群。血走った目をした緑の小鬼たちが手に思い思いの武器を持ちこちらをにらんでいる。


五百と言っていたがその倍以上は感じられる。今になってビビってきたが泣き言は言ってられない。


「ガアアアア!!!」


「魔法隊!撃てぇぇぇ!!!」


魔物たちの雄叫びと俺の号令、二つの叫びが戦いの火蓋を切る。


 城壁から降り注ぐ数多の魔法。さながら流星のようなそれは、何体もの魔物を潰していった。出し惜しみはせず全力を出し切ってもらう。


全員の魔力が切れたら次は物理的な兵器の出番。降り注ぐ矢とガラクタの雨。魔法を撃っているうちに敵は城門のすぐ近くまで近づいていて見事に全てが当たっていく。飛び道具になすすべな崩れていく魔物たち。


さあ、仕上げだ。


「特攻隊、出るぞ!!」


 門が音を立ててゆっくりと開いていく。徐々に鼓動の速度が高まってくるのを感じた。

そして、門が完全に開ききり俺たちは飛び出した。


その直後に門が閉まる。正に背水の陣。これこそやけっぱちだが全員が死に物狂いで槍を振るう。


「オラっ!!」


「ハっ!」


 意外にも彼らの動きは洗練されていた。


ゴブリンの攻撃を回避しそのまま勢いを使って突きを入れ一旦下がり、その間は他のそこをカバーするといったといったヒットアンドアウェイの連携が魔物相手に綺麗に決まっていた。


目に見えて着実と魔物の数は減っている。


だが、あまり戦いに慣れていないのか危ないところもある。が、そこらへんの援護は俺の仕事。


「大丈夫か!?」


ある門番の背中から襲いかかってきたゴブリンを俺は槍で突き刺す。


「あ、ああ、ありがとう。お前......、なんか変わったよな」


「今はそんなのどうでもいい!!動けるなら立て!さもなくば下がれ!」


 その後も俺は戦場を駆け回りながら危ない門番を助けていった。これが俺の役割だ。


絶対に誰も死なせない、そう俺が決めたのだからそれがクリア条件。このままでいけるそう思っていた時だった。


「お、おい、なんだよ!?あの巨人!?」


 もう魔物の数があと数匹になってきたところで、見上げんばかりの緑の巨人が戦場に現れた。その腕を凪払うだけで何人もの人が飛んでいく。


あれの名前はグレートゴブリンだ。このイベントのボスに設定されていたことを俺は今になって思い出した。厄介なことに異常に打たれ強くなかなか倒れない。


「お前らは下がってろ。俺が相手する」


グレートゴブリンの攻撃はその巨体ゆえに遅い。ゲームになれた俺ならあくびをしながらもよけられる。問題はどうやってこいつの体力を削るかだ。

何回も槍で突き、切り裂き、叩きつけても何度も立ち上がる緑の巨人と反対にどんどん俺は疲労を溜めていった。


「ハア、ハア、まだ終らないのか......」


元々運動不足のレグリオンの体は悲鳴を上げる。


「グオオ!」


「っっつあああ!」


ついに避けられずグレートゴブリンの拳がもろにボディに入った。その一撃で鎧が半壊した。さらに追撃が続きダメージがたまっていく。

避けようにもさっきとは比べようもないほどグレートゴブリンのパンチは早く見えた。


「グァ!」


そして飛んでくる明らかに大振りの食らってはいけない一撃。しかし、気づいた時にはもう遅く俺の体は宙を舞っていた。

一瞬の浮遊感を味わうとともに地面に激突する体。その衝撃が内蔵に傷をやったのか俺は血を吐く。


「……」


意識が朦朧としていて指一本さえも動かせない。

もう俺には立ち上がる気力が無かった。


「「「レグリオン負けるな!!!」」」


大地を揺るがすような大声の応援が背後から届いた。

後ろを見れば閉じたはずの城門が開いていた。

そして何人もの群衆が列をなして俺を見ている。誰もがこんな状況下でも俺が勝つのを信じ切っているかのような表情だ。


「やるしか、ねえ!」


すでにレグリオンの体は満身創痍の状態、出来ても次が最後の一撃だろう。可能なかぎり力を込めゲーム時代何度も使った槍スキルの名を俺は叫んだ。


「スパイラルスピアァァァァァ!!!」


ドリルのように回転するありふれた、しかし、俺の限界の力を込めた槍はついに巨人の心臓を貫いた。


「ア、ァァ、、、」


グレートゴブリンはとうとう息絶え草原に倒れた。群れのボスが居なくなった魔物たちは勢いを失いそのまま逃げていった。


「もう、限界……」


と、同時に俺も意識を手放した。



ーーーーーー


「勝った!勝ったぞ!!」


 いつも門の前に立っているだけの彼らはいつもより活き活きとした表情をしていた。怪我人こそいるが、死者は一人もいない。大勝利と言っていい結果だろう。

戦いが始まる前は辛うじて出ていた陽はもう沈みかけている。だが、空を赤く染める夕焼けは彼らを祝福しているかのようだ。


彼らは空に槍を掲げ叫んだ。彼らを勝利に導いた今は気絶している英雄の名を。レグリオン万歳と.......。









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