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ゲーマーの俺に課せられた「意識が切り替わるたび違うNPCに乗り移る」という試練  作者: 青空啓一
2章 とうとう帰れる日が近づいてきたかもしれない
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24話 帰ってきたのか!?

青空啓一です。二ヶ月近くお待たせしてすみませんでした<(_ _)>

今回より二章スタートです!


一章までのあらすじ


引きこもりの男子高校生、岸田啓太。彼はやり込んでいたゲーム、「カラミティオンライン」内のNPCに乗り移る能力をある日得る。

自分が何故こんな世界にやってきたのかを調べるうちに啓太は、最強NPCの一角、ルミナや自分と同じようにゲーム内に入り込んだ波瑠を仲間にし活躍を重ねる。

しかし、氷の悪魔フルーレティの襲撃の折、初めて自分が乗り移った人を死なせてしまい啓太は失意に暮れる。

そんな時、ルミナが攫われたことを啓太は波瑠より聞かされる。啓太は自分の弱さに打ち勝ちルミナを取り戻すことに成功した……


気づけば全く知らない場所で目を覚ますというとんでも体験が日常となっていた。


毎日違う姿でゲームだったはずの世界を探索し単なるキャラに過ぎなかった人と話す。そんな現実離れをした日常に異変が起きたのはリルからルミナを救出して一週間が経った時だった。


ガタンゴトンガタンゴトン!!!


俺はとある轟音に叩き起こされた。それはひどく懐かしい音ではあるが絶対になるはずのない音。俺はすぐに飛び起きて周りを見渡した。


「ここは……」


この部屋はファンタジー世界には似つかわしくない現代の建築であった。さらに、部屋には電化製品までもがある。


ここまでくるとと俺ももう勘付いてしまった。カーテンを開けて外の景色を見てみた。


「マジ、か……」


あの世界にはあるはずのないビルや道路が俺の目には写っていた。そして、俺を起こした電車が通ったであろう線路が引かれている。紛れもなくここは元の世界、日本だった。


「戻ってきたのか……」


驚き、そして、喜んだ。いくら自分が好きなゲームの世界とはいえ生まれ育った環境が恋しくなることは何度もあった。高校生になってホームシックなんて恥ずかしいものだが。


しかし、あの世界で出会ったNPCである彼らにもう会えないと思うと心が痛んだ。現実では無かった人との交流の楽しさがあの世界にはあった。ルミナと見たあの星空は現実の何倍も美しかった。


「ルミナ……」


思わず彼女の名をつぶやいてしまった。違う世界にいる彼女には届くはずもないのに。


「……」


気分を変えようと俺はこの家を調べることにした。日本に戻ってきたことに疑いはないがこの家は俺の家ではない。見覚えのない他人の家だ。


家はそこまで広くはなかった。部屋探しなんてしたことはないが、多分一人暮らし用な気がする。それと、ぬいぐるみが置いてあったりピンクの可愛らしいクッションがあったので女性の家なのだろう。


女の人の部屋を漁るとか変態のストーカーかよ、俺……。


急に悲しくなってきたが、そもそも俺は何でこの部屋にいるのだろうか。その答えは洗面所に行った時に見つかった。


「あー、やっぱこういう感じ?」


鏡に映っていたのは俺には似ても似つかない綺麗な女性。謎の入れ替わり現象は、まだ継続中だった。


♪〜〜♪〜〜


寝室の方から音楽が流れた。どこかで聞いたことがあるメロディーだが思い出せない。っていうかこれ着信音だ。


寝室に行くとベットの上に置かれたスマホがブルブルと震えていた。取るべきなのだろうか。俺はとりあえず画面を覗き込んだ。


「……!もしもし!?」


表示された電話番号を見るなり俺は電話を取った。なんとかかってきたのは俺の家の固定電話からだった。


『啓太ね?』


電話越しに聞こえた声は間違いなく俺の声だった。


「そっちは波瑠か?」


『ええ、やっぱりあなたも戻ってきたのね。で、私の体を使っていると』


……どうでもいいが俺の声で女の喋り方をするとすごい気持ち悪い。


「とにかく一度会わない?」


話をしてみると意外と俺の家と波瑠の家が近いようだ。結構行きつけだった喫茶店の名前を出すと波瑠も知っているみたいなので、俺と波瑠はその喫茶店で会うことになった。とりあえずスマホを持って俺は家を出た。


「なんか懐かしいっていうよりかはそれこそ異世界に来たみたいだ……」


カラミティオンラインの世界にいた時間はそれほど長くないが、いかんせん経験が良くも悪くも濃密すぎた。そのせいか懐かしい風景を眺めてもどこか違和感を感じる。オマエの居場所はここじゃないと誰かがいっているような。


それでも体は覚えているようで喫茶店までは迷わずに行けた。


カランカラン


喫茶店は記憶となにも変わらないままだった。まあそこまで時間は経っていないから当然と言えば当然だが。


「……あ、客か。はぁ、いらっしゃいませー」


相変わらず店主にやる気がない。それゆえこの店はあまり繁盛しておらず、客はまばらだ。ただコーヒー自体は美味く意外とリピーターが多い。


とにかく目的の人物はすぐ見つかった。俺だ。妙に気取った態度で席に座ってるのは俺への皮肉だろうか。


波瑠の座っていた席に俺も座り適当にカフェオレを頼む。


「おい、波瑠。俺の体で変なことするのはやめてくれ。絶対に分不相応だって分かってしまって二重に辛い」


「まあ、そうね。私も自分ではやってて寒いってずっと思っているわよ」


そう言いながらも髪をかきあげウインクまでする始末。こいつ楽しんでやがる……。


そうふざけ合いながらも店主しかいないとはいえ怪しまれるとまずいので、一応声は抑えてある。


「っていうか、俺の体すごいガリガリなんだけど」


「言われてみれば私の体もかなりヤバイわね」


なぜ今になって気づいたのだろうか。お互いの記憶にある自分の体より痩せこけている。今、思えばやたらと頭が朦朧としているし割と危険かもしれない。


「とにかく何か飲みましょう。せっかく現実に戻ってきたのに餓死なんて絶対に嫌だわ」


「そうだな。全く俺と入れ替わってた奴ら適当に水飲んだり何か食べたりしてくれたら良かったのにな」


そう言いつつも頭の中では多分無理だろうと思った。以前、ルミナが俺と入れ替わった時、彼女は俺の部屋を完全に警戒していた。他の人たちも飲み食いどころではなかったのだろう。


向こうの時間の流れが早くて良かった。大体向こうの3日が現実の1日ぐらいだったはずだから、現実では5日ほどしか経っていない。これでもし同じ時間が流れているのだったら、自室で餓死する変死体ができるところだった。


それから波瑠と現状を話し合った。そこであることが話題に上がった。あのリルとかいう男が言っていた雷族というものだ。何となくだが雷族というのはあいつが作った単なる造語ではなく、もっと裏があるように感じる。あいつらも現実に戻ることが出来るとしたら何か痕跡が残っているかもしれない。


波瑠と一緒にネットで情報を探ることにした。……調べてみると大量に出てくる。そもそもカラミティオンラインはプレイヤー数では同じようなゲームで一二を争うほどの多さだ。そのプレイヤーが全員ではないとはいえこんな事態に巻き込まれればそりゃ話題にもなる。集団催眠だとか新種の奇病など様々な憶測が流れているようで、ニュースにもなっていた。


ただ結論としてあまり有力な情報はなかった。某掲示板サイトではカラミティオンラインや雷などと関連づけている人もいたが、何故か叩かれまくり書き込みを消してしまっている。


「私たちって結構有名人みたいね」


「いい意味では決してないけどな。プライバシーとかどうなってるんだ……」


流石にテレビでは実名報道はしてないが、ネットではバンバン本名、職業、その他諸々が出てる。


「そう考えるとこの体をどこに置いておくかってのも問題ね」


「確かにな、家族にも迷惑かけるだろうし」


「……お母さん、かなり心配していたわよ」


「そうか……」


なんだか空気が重くなってしまった。そんな俺を見かねてか波瑠が空気を変えようととんでもないことをした。


パチンと指が鳴ると同時に小さな火花が散り、手の平大の花火が生まれた。手品などとは言うはずもない。あの世界に俺たちはいたのだから。


「ま、魔法か……?」


「ええ、火魔法と光魔法の合わせ技ってところかしら」


「何でここで魔法なんてもんが使える?」


「さあ、さっぱり分からないわ」


「そうだ、……『ルミナ、聞こえるか?』」


『ケータ!心配したのよ!どこにいるの!?」


テレパシーを使うと同時にルミナの声が頭に響く。あまりに大きすぎて頭の中でキーンと鳴る音が止まない。


『し、心配かけたみたいだな。俺と波瑠は元の世界にいるんだ』


まさか魔法が使えるなんて思いもしなかった。もしかしてゲームの中に入り込んでいるんじゃなくて違う世界なのか?……いくら考えても答えは出ない。思考を体の保存へと戻した。


「周りから見たら多重人格者ってことだろ。精神病院に入っていれば世話してくれるし死ぬことはないんじゃないか?」


「自分から病院に入る精神疾患の患者なんて珍しいけどね。ま、なりふり構っている場合じゃないか」


俺たちは喫茶店を出た。

次の投稿はおそらく1週間ごとなります。


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