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17話 なぜ俺はこの世界に……

『ここが啓太がもともといた家?』


「ああ、間違いない」


『……こんなおかしなところから啓太は来たの?』


「おかしなところって……いや、まあルミナからしたらそうか」


違う世界から来たルミナからしたらテレビがどんなものかなんて想像もつかないだろう。


「リモコン、ああ、さっき持ったボタンがある、じゃなくて突起がある黒い棒をもう一回持ってくれないか?」


それから時間を掛けながらもルミナにリモコンの使い方や俺の世界のことについて話した。ルミナは驚きつつも俺の話を聞いてくれた。


「簡単に言うと俺の世界では君たちの世界は作り物の物語だと思われていた。混乱するだろうと思うが、事実俺はその世界の行く末を物語を通して知っている。さらに言えば君の人生も……」


ゲームというのは説明しづらかったから言わなかったが、十分意味は伝わっただろう。


『う、嘘でしょ……?』


ルミナの震えた声が頭の中で響いた。


当然といえば当然だろう。今まで必死に生きてきた世界、人生が誰かの想像の産物であり結末の決まったものだと分かってしまったのだから。そんなことは誰だって認めたくない。認めてしまったらそれこそ今までの人生を全否定されることと変わりはないだろう。


だが、この事実をルミナに受け入れてもらわなければ俺たちは先に進めない。俺は心を鬼にして証拠をルミナに突きつけることにした。


「ルミナ、さっき教えた機械を起動してくれないか?そこに答えがある」


『pz4ってやつ?分かったわ……』


ルミナに口頭で説明して起動させたのは「カラミティーオンライン」だ。ルミナのぎこちなさがテレパシーでも伝わってきたが何とかログインは出来たようだ。


『画面?が明るくなったわ。ってここトレントじゃない!?』


「ようこそ、「カラミティーオンライン」の世界へ」


『いや、カラミティーオンラインとかじゃなくてこれはトレントの大通りよ!』


「よし、さっそく俺たちの家に来てくれ」


『来てくれってどういうことよ?』


「とりあえずコントローラーの十字キーかスティク動かせばキャラを動かせるから」


『何て????』


「分からないか……」


それから俺はゲームについて、操作方法について、カラミティーオンラインについてルミナに詳しく教えた。ルミナは衝撃を受けた様子だった。


『大体操作は慣れたけどこうやって画面を通してあの街を見るのは慣れないわ』


「確かにルミナからすると違和感を感じるかもしれないな」


そんな会話をしているとガチャッと家の扉が開き平凡な顔つきをしていた男が入ってきた。


「俺からするとこっちの方が違和感がすごいけどな」


『あ、私の体!』


目の前の男は俺が使っていたアバターだ。今はルミナがコイツを動かしているはず。


「ルミナ、見えるか?」


『……本当だったのね。私たちがこのカラミティーオンラインの住人ってのは』


「で、どうする?こんなことを知ったこれからも俺に協力してくれるのか?」


『……今はまだ分からない。でも、あなたが悪い人だとは思えない』


「ルミナ……」


『まあ、一度乗りかかった舟だしね。あなただって何かに巻き込まれただけなんでしょ?手伝うわ』


「……ありがとう、ルミナ」


異世界の人間なんていう相容れない存在に手を貸してくれるルミナの親切心に感謝した。


「よし、まずは現状の整理をしよう」


今、思えば6日前魔王を倒そうとしたあの夜からこの謎の現象は始まった。(6日といってもゲームの中の話だが)以来、気絶もしくは眠ってしまったら起きた時にいわゆるNPCに入れ替わるという状況だ。なんで俺がこんな状況に巻き込まれたのかは全く分からないが今俺がいるのはカラミティーオンラインの世界そのままで魔法やスキル、設定、キャラクターまで全て同じ。そしてルミナが今現実にいることからここはカラミティーオンラインそっくりの異世界というわけではなく俺がそのままゲームのAIのようになっているということなのだろう。


そこでふとある疑問が頭に浮かんだ。ログオフ、もしくは強制的にシャットダウンした場合俺はどうなるのか。ある意味で博打に近い。もしかしたら元の岸田圭太に戻れるかもしれないがログオフした瞬間俺の自我が消滅なんてパターンもありえる。


他に何か手はないのか。悩んだ結果あることを思い付いた。


今、ルミナは現実世界にいるわけだ。ということは現実での情報も手に入れられるはずだ。現実では俺以外に精神がゲームの世界に入ってしまったなんて人がいるかもしれない。その情報を得ることが今取れる最善の手だと俺は考えた。


「えーと、ルミナ。ネットでゲームの世界に入り込んだ人がいないか検索してくれないか」


『ねっと?何なのそれ?』


忘れてた……。ルミナは電子機器なんて使ったことないファンタジーの住人だったんだ……。


しかも、よく考えれば俺みたいにカラミティーオンラインに入り込んでしまった人がいたとしてどうやってその情報をネットに書き込んだり出来るんだ。


結局は浅知恵かとため息を吐いた時俺の今までの災難が頭に走馬灯のように流れた。冴えないバカ門番を英雄にしてしまったり女の姿に四苦八苦したりとあとあと思い出せば苦い思い出だ。


……そうだ。たとえカラミティーオンラインに入ったやつが現実に戻ってこれなくてもそいつの体にはそいつに体を乗っ取られたNPCの心が入っている。はたから見たらひどく違和感を感じる光景だろう。ある日突然人が変わったようになってしまうのだから。


この線で調べてみよう。

またルミナにネット検索の方法を教えるのは手間取ったが、パソコンやスマホに対する恐怖心はなくなったのか結構早く覚えてくれた。


「よし、じゃあルミナ、こうキーワードを打ち込んでくれ。「カラミティーオンライン 人格変化」」


『オッケー』


少し沈黙が続いた後、ルミナが話し始めた。


『検索できたわよ』


内心ガッツポーズを決めてルミナに検索結果を一つずつ読んでもらった。しかし、あまり思っていたようないい情報は手に入らない。


いい加減めんどくさくなってきた時ルミナの言葉が耳にとまった。


『えーと、ついーと?ってやつみたいね。なになに、「親友と一緒にカラミティーオンラインした次の日から親友の様子がおかしい。ゲームで出てくるギルドの職員みたい」だってさ。これってもしかして……』


……間違いない。この人の親友は間違いなく俺と一緒だ。


「ルミナその人の最近のツイートを洗ってくれないか?」


『えーと、「親友が最近怖い」、「日をまたぐたびに性格が変わっている」、「もしかして多重人格?」とかいろいろあるわよ』


それにしてもルミナも大分ネットの扱いに慣れてきたみたいだ。すっかりファンタジー感が抜けている。


おっと、今はこの人のツイートに集中しなくちゃな。


「最初のツイートの日付を言ってくれないか」


『えーと、9月8日みたいよ』


その日は俺がカラミティーオンラインで魔王に挑んだ日だ。そういえばあの日はかなり近くに雷が落ちてきて大規模な停電が起きていた。


カラミティーオンライン、9月8日、雷。


何かに繋がりがあるのかもしれない。何もかもが謎だった現状に光が見えてきた。



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