16話 今度は誰に?
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「あ、ここは……」
俺は自分が買った家の中にいることに気づいた。
だが、ガランとした部屋の中には俺しかいない。
「あれ?ルミナは?」
ルミナがどこを探しても見つからなかった。
探すといってもこの小さな家に隠れるような場所は無いんだが。
出かけているのかと思ったがある単純なことに俺は気づいた。
「そういうことか。ルミナに憑依したってわけか」
思えば少々体の使い勝手が違う。俺以外には分からなことだろうが女と男の体は動かしていて微妙に差がある。
「気づくのが遅かったのはルミナが鍛えているのと胸がないからだろうなあ」
『何ですって……?』
「え!?ルミナの声が聞こえた!こわ!」
『空耳じゃないわよ!テレパシーよ!テレパシー!契約したの忘れたの?』
ファーストキスを思い出し顔が赤くなった。ルミナにはバレていないだろうが恥ずかしい。
「そうだ、今ルミナはどこにいるんだ?」
これはずっと確かめたいことだった。俺が誰かに憑依した時当人の意識はどこにあるのか、それが分かれば手掛かりになるかもしれない。
『そう!それよ!ここはどこなの?薄暗い部屋に閉じ込められているんだけど見たことないものがいっぱいだわ。もしかして怪しい魔道具とか?』
何やら危険な場所にルミナを送り込んでしまったかもしれない。とにかく安全を確保してくれと俺はルミナに伝えた。
だが、ルミナが言うには特に危険を感じさせるようなものはないらしい。
「とにかくその場所にあるものを詳しく教えてくれないか?」
もしかしたら俺のゲーム知識を使えばその場所がどこか分かるかもしれない。
『そうね、黒い棒状の板があるわ。それに文字とか数字が書かれた突起が
いっぱい付いてる』
「うーん、何だそれ?」
『この突起押してみるわね!』
「いや待て待て!もうちょっと調べようぜ!」
俺の制止の声はルミナには届かずルミナはさっそくその文字が書かれた突起というものを押したらしい。
そして……、俺の耳にひゃあ!という可愛い悲鳴が届いた。
『啓太!突起を押したら目の前にあったもう一つの大きい黒い板に人が出てきたのよ!板の中で何かを喋ってるわ!も、もしかしてこの中に閉じ込められているのかしら!?』
ルミナは早口でそう話した。 少し怯えが混じったような声だ。
それにしても人を閉じ込めるアイテムなんて聞いたことがない。
『ど、どうやって彼女を助けたらいいのかしら?この部屋おかしいわ……。変な匂いがする袋が何個も置かれているし』
その時俺俺の頭に一つの仮説が浮かんだ。
「なあ、もしかしてルミナ今男になっていないか?」
『男?……あ、そうかも知れない……』
「じゃあ、その黒い棒状の板の突起をもう一度押してくれ。あ、同じのをな」
『え、また押すの?あ、消えた』
「やっぱりか……」
俺にはルミナがどこにいるのか分かった。
「そこは……、俺の家だ。元の世界の」