15話 俺のこの能力は……
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今日は誰になるんだろう。そう思いながら俺は目を開けた。
どうやらここは冒険者ギルドのようだ。またエリスになってしまったかと思ったが視線の先に冒険者と喋っているエリスがいた。
となるとエリス以外の人物となるが……。俺は自分がギルド職員の制服を着ていることに気がついた。そうだ、ギルド職員はみんな胸にネームプレートをつけているんだった。
オリーヴ
ネームプレートにはシンプルにそう書かれていた。
オリーヴというとエリスの同僚で俺がエリスとして魔物の襲来で傷ついた人たちを手当てし回った仲でもある。全く知らない人になるよりかはマシだろう。
俺は昨日のことを思い出しそっと唇を撫でた。自然とルミナの顔が思い浮かぶ。ただの契約、そうだと分かっていても意識してしまう。
ルミナは今頃あのぼろ家で目を覚ました頃だろう。
ギルドの中はまだあまり人がいなかった。なぜなら大抵の冒険者はもっと早く、それこそ太陽が昇ると同時にといったほどの時間に仕事に行ってしまうからだ。
隣の受付に立っていた男性が暇そうにあくびをしている。やることがなくて退屈そうな様子だ。
周りを見れば他の職員も同僚と喋ったりしていてさらには冒険者の食事用に作られた食堂兼酒場で朝食を食べている職員もいる。
冒険者の受付以外にも仕事はありそうな気もするがとにかく今は暇な時間帯のようだ。
抜け出してもバレないかも、そんな考えが頭をよぎった。
そーっとカウンターを後にして職員用の裏口からギルドを出た。
俺は街の中心から外れた裏路地にある俺の家に向かった。やっぱりルミナのことが気になったからだ。
小走りで行くとそこまで時間もかからず着いた。
それにしてもメキメキと軋んでいて今にも崩れそうな家だ。
家の扉をノックした。だが、この家に鍵なんて良いものは付いていない。マナーというやつだ。
あまりに不用心だがルミナは気にしていない様子だった。
少しした後おそるおそるといった感じで扉が開いた。
「あ、あのー、どちら様でしょうか?」
「俺だよ、ルミナ。入れ替わったんだ」
「え!?も、もしかして啓太?」
信じられないとルミナは俺の体を上から下まで見てボソッと呟いた。
「……男に負けた」
俺の胸を恨めしそうにルミナは見てた。
よく分からないが俺は床に座った。よく考えたらこの部屋には家具がない。それでどうやってルミナは寝たのだろう。
「ねえ、ルミナ。布団もないのにどうやって寝たの?」
「そんなの雑魚寝よ。野宿に比べたらマシだわ」
改めてルミナが色んな意味で強い女性だと実感した。
感心したように頷いているとルミナがあることを聞いてきた。
「そんなことより何で女の口調なのよ。まさかオネエになった……?」
「んなわけねーだろ!癖だよ、癖!女の姿をして男の喋り方していると怪しまれるだろ?」
「いや、あなたの正体を知っている私からすると無理して女の喋り方を真似している感じで変なのよね。私とあなたしかいないんだし普通に喋ったら良いじゃない」
「それもそうか……」
「で、今のところあなたの呪いに関して手掛かりはあるの?」
俺は申し訳なく首を振った。
「いや、それが全く無いんだ……。分かってることといえば乗り移った人たちの関係性ぐらい」
「乗り移った人の関係性?」
「ああ、俺が乗り移った人同士は何かしらの接点があったんだ。その可能性も突然神に変わったことで消えたけどな」
「神になった?」
ルミナは大きく口を開け驚いた。
「何回か前にな。想像とは違ったけど」
神とは言ってもひたすら祝福なんて作業をさせられる存在だった。俺からすると拍子抜けした結果だったがルミナはとんでもないことを聞いてしまったといった顔をした。
「ヤバいわね……。憑依、よくよく考えれば恐ろしいものだわ」
「憑依って何だよ。俺は
幽霊かなんかかよ」
「じゃあ乗り換えるみたいな?」
「電車か!?」
ルミナは不思議そうに首をかしげた。
「電車って何?」
「あ、そうか……」
ルミナは結局このゲームの世界の人間だ。電車なんて知らないのだろう。
「まあ憑依でいいでしょ。それよりも私もあなたに憑依されてしまうことはあるの?」
「それは、分からない。分からないが可能性はある」
「頼むから変なことしないでね……」
ルミナは疑うように俺を見た。
「ずいぶん信用がないな。まあいいや。そろそろギルドに戻らないと」
「?あ、そのオリーヴっていう人ギルド職員だったの?」
「ああ、じゃあちょっとギルドに帰ってこのオリーヴの体を戻してくる」
その後ギルドに帰った後エリスや他の同僚に仕事をサボったことを怒られた。
オリーヴに心の中で謝りつつも俺はショックボルトを使った。
明日からは2日に1話投稿となりますm(__)m