今度は俺の番。
よく分からない女を連れて、外まで歩く。
……そういえば気になっていたことがある。
「なあ、あんたって京華院だと聞いたんだが本当か?」
「…ええ。私は京華院 時雨。父が京華院グループを経営していて、私は社長令嬢ってわけ。不本意にもね…」
ん?不本意だと? 親子仲が悪いのか?
しかし、事情に踏み入れるのは藪蛇だろうな。
「…そうか。それならボディーガードはどうしたんだ?付けてるんだろ?」
「いえ、私SPとかって嫌いなの。へどが出るわ。まあ、そのせいでこんな目に遭ったんだけどね。」
「ねえ、それよりも私も気になるのだけれど、どうやって助けてくれたの?最初凄い音がしていたけれど、あれも貴方?」
「ん?ああ、あれか。あれはその辺に落ちていた鉄パイプやらを使って仕掛けた。鉄パイプを立てておいて、工場のフォークリフトを細工して遠くからぶつける。すると大きな音が出るし、フォークリフトが動いているため誰か居るのかと思わせられる。それを後ろから襲ったわけだ。」
フォークリフト自体は廃材などで勝手に進むようにしていた。
正直フォークリフトが残ってて助かった。無ければ奇襲は出来ないから苦戦していただろう。
それに、フォークリフトが遅くて良かった。
ある程度余裕が出来るからな。
「そう、機転が利くのね。でもそれだけじゃないわよね?貴方、あまりにも強かったわ。」
「俺が?…よしてくれ。俺は万年ぼっちのチキン野郎だぜ?……かませ犬だし。」
「あら、ぼっちなの?意外ね。
ふふっ、私が友達になりましょうか?」
こ、こいつ俺を煽りやがる…
だが、こいつの笑った顔って綺麗だな…
「別に友達とかいらないし…
てか、それより外に着いたぞ。」
「ええ、ありがとう。少し待って。電話するから。」
そう言うと、彼女は手早く電話をかけ、二言ほど話したらすぐに切った。
「今日はありがとう。お陰で助かったわ。」
「ああ、こちらこそ。じゃあ、俺はもう用済みだよな?約束通り帰らせてもらう。」
「ええ、そうね。…ところで外って広いと思わないかしら?」
ん?急にどうしたんだ?俺は早く帰りたいんだけど。
「まあ確かに広いが。」
「それに、外って何かしら?何処から何処までが外?」
え?マジで意味わからん。外って外じゃないのか?てか外ばっかでゲシュタルト崩壊してきたわ。
「外は外だろ?範囲はない。」
「そうよね、範囲はないわよね。じゃあ、約束してた外も、範囲はないわよね?」
「はあ!?まさかまだ帰らせないつもりか!?」
「ええ、そのまさかよ。貴方には今日のお礼に私の屋敷まで来てもらうわ。」
そういった彼女はおもむろに振り返った。
そのその目線の先には、お高そーなリムジンと、屈強な男達が居る。
そして俺は、筋肉ダルマたちに誘拐されるのだった。
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