制圧
ホールには入り口が二つあるが、入って来たのとは別の入り口まで音をたてずに向かう。ちょうど入り口同士が対角線になっていて、誘拐犯どもを挟んでいる形だ。そして、俺は手早く準備を済ませる。これをすることで、後々助かることだろう。
さて、 準備が出来たが、制圧するタイミングも大事だ。
まず女の子の位置を確認する。
次に誘拐犯、ならびに持っている獲物。
伏兵さえいなければ、大体把握した。
あとは女の子がどれだけ度胸があるかだが…
よし、そろそろだな…
俺がホールに突入すると同時、
ガァン! と大きな音が鳴り響く。
「なんだ!?」
「誰だ!?」
「もうサツが嗅ぎ付けたのか!?」
誘拐犯どもは錯乱している。
この隙に俺は銃を持っていない男の側頭部に上段蹴りを入れる。
相手は静かに崩れ落ちた。
……まだ周りは気付いていない。
次もやはり近くに居る銃を持っていない男に小手返しをかける。
「おい! なんだお前は!?」
「もう二人もやられてるぞ!応戦しろ!」
ナイフが向かってくる。
シュン ヒュンッ
さすがに速いな………
だが、
「なんだこいつは!?ナイフが怖くないのか!?」
ナイフを紙一重かわしながら懐に入り、顎に掌底を入れる。
鉄パイプで殴りかかってきた男には四方投げをして無力化する。
だが、近くの男が仲間を傷付けるのも厭わず、ナイフを投げてきた。
ヒュンッ
なんとか避けられたが、ラッキーだったな。
さて、あと残るは8人ほど。そのうち銃を持っているのが2人か…
「おいお前! すぐに止まれ!でないと撃つぞ!」
「へへへ、残念だったな坊や。おとなしく殴られろや」
「ああそうかい。銃は恐いもんな。だれでも殺せる。達人でもな。」
俺はバレないように移動しながら、話を続ける。
「へへ、わかってるじゃないか。そうだ、お前さん強いし俺の舎弟になるのはどうだ?女とヤリ放題だぜ?」
「ああ、光栄だな。だがな、俺は人を人とも思わない奴が大ッ嫌いなんだよ!」
「ちっ、こいつ! 撃て!!撃ち殺せ!」
「できません!あいつ仲間を盾にしてやがります!」
そう、俺は沈めた誘拐犯の一人を盾にしていたのだ。
そして相手が動揺している今、相手に向かって誘拐犯を投げつける。
「うわっ!?」
もたついたな。
すぐさま近くに駆け寄り、銃を持つ手に小手返しをかけ、銃を奪う。
しかし、もう一人銃を持つ奴が女の所に行ったみたいで、人質に取っている。
「おい、いいのか?こいつがどうなっても知らんぞ?」
「むぐむぐ、うー」
女の子はガムテープで口を押さえられていて、上手く喋れないようだ。
…どうするか。
「そうだ、そのままだ。おとなしく銃を捨てろ。こっちに投げろ。もし抵抗する素振りでもしたらこの女を撃つからな?」
「…ああ。わかった。銃を渡そう。」
そう言いながら、ゆっくり銃を投げる。
それを見て、誘拐犯は一瞬隙を見せた。
俺は見逃さず、すぐさまスライディングして空中で銃を掴み、滑りながら誘拐犯に向けて発泡する。
ドン ドンッ カラン カラン
薬莢が跳ねる音が響く。
誘拐犯は崩れ落ちた。
……勘違いしないで欲しいが、別に殺したわけではない。ただ、壁に当たっただけだ。まあ、誘拐犯は撃たれたと思ってショックで気絶しているみたいだが。
とにかく制圧は成功した。
大変疲れた。さっさと帰ってゲームがしたいものだ。
「むーむー、うー むぐむぐ」
おっと、女の子を忘れていたな。
助けないと。
俺は女の子を解放してあげるべく、落ちているナイフを拾いに行くのだった…
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