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45. 転移ゲート

「全員、集合済みだよ。召喚主」


 ギルダム中央村の中心にある広場の端、大きな岩によって門のように形作られた物体の前に、俺の配下全員が集結していた。『地獄射手』が整列を行ってくれていたようで、そこに雑然さはなく、きちんと整っている。


「ったく、ここのアンデッドたちは子供以下の存在だよね。少し目を離したら、すぐに各々が好き勝手に散らばっちゃうんだ」


 ため息を吐いて肩を竦めた『地獄射手』に労いの言葉をかけてから、俺は岩の門を間近で見上げる。


「これが転移ゲート、か」


 魔術が施された転移ゲートの向こう側は眩しい光に包まれていて、見通すことができない。ここを抜ければ、俺たちはルフェリア城下町に出る。アルギア召喚宮殿はすぐ目の前にあるとレーナから聞いていた。


 アンデッドたちを引き連れていれば、確実に目立つ。恐らく、警備兵たちも集まってきて、大事件に発展するだろう。その前にアルギア召喚宮殿内部まで到達しなければならない。


 背後で足音がして振り返ると、そこにはレーナ、アリカ、オルビークの三人が立っていた。


「シュ、シュウトさん……」


 少し不安げな様子でアリカが呼びかけてくる。


 そうだ、俺はまだ彼女にちゃんと謝っていない。

 アリカを傷つけてしまったことを、彼女の怯えた態度で再確認する。


 出発の前に謝らないと、と俺が口を開こうとした時。


「シュ、シュウトさん……昨日、レーナを襲ったんですか……!?」


「は?」


 間抜け面で唖然とする俺の前で、アリカは人差し指同士をつんつんと突き合わせて、もじもじと恥ずかしそうに、


「き、昨日……宿屋でレーナの助けを求める声が聞こえてきたので……私は怖くて様子を見にいけませんでしたが……」


 はい、さっそく誤解頂きました。


 俺はキッとレーナを睨む。

 すると、彼女は高速で目を逸らし、ただただ無言を貫いた。

 あ、あいつ……!


「ついに我慢できなくなってしまったのじゃな。ま、あんな可愛い弟子を持っていたら、当然のことじゃ。気に病むでない」


 めちゃくちゃにやにやした表情で、オルビークがからかうように近づいてくる。背の低い彼女の頭がちょうどいい位置にあったので、俺はその脳天に肘を落としておいた。


「い、いたい! なにするのじゃ!」


「なにするのじゃ、はこっちの台詞だぞ! 俺は襲っていない! 襲っていないんだ!」


「ほ、本当ですか……?」


 アリカは未だ疑わしいものを見る目で、俺にじっと視線を送ってくる。


「本当だって!」


「……なら、信じるとします」


 そう言ったアリカの表情は、優しく和らいでいた。

 どうやら本気で疑っていたわけではないようだ。

 彼女が心の中で何を思っているのか、俺にはなんとなくわかる。


 きっと、彼女はいつも通りのアホなやりとりができたことを喜んでいるのだ。

 それは、俺との心の距離を測る行為。

 絆が消えてしまっていないか、それを確かめる行為だった。


 ……オルビークはただ面白がっていただけな気がするが。


「ごめんな、アリカ」


 俺は少し間を置いてから、謝罪の言葉を口にした。

 それを聞いたアリカの瞳が少しだけ開かれて、すぐにいつもの笑顔に戻る。


 彼女はそれが何についての謝罪なのかを聞かなかった。

 それでも、俺たちの想いは通じ合っていた。だから、彼女は。


「良かったです。いつものあなたに戻って」


 と、その一言だけを返してきたのだった。




「さて」


 俺は身体をくるりと回して、転移ゲートと正面から向かい合う。


 作戦決行の時はきた。


 俺は俺に従ってくれている召喚モンスター全員に聞こえるように声を張り上げる。


「これより、俺たちはアルギア召喚宮殿を襲撃するッ! 目的は、我が同胞『地獄骸』の再召喚。胸に復讐の火をともせ! それでいて、決して冷静さを忘れるなッ! 復讐に囚われ、破壊だけを行うことは許さない。俺たちは破壊的に、それでいて、極めて合理的に、宮殿深部の再召喚宝物を手に入れるッ!」


 俺の宣言に、召喚モンスターたちは雄叫びを上げた。

 村中に響きわたるその叫び声は、俺たちの出立を村人たちに告げていた。


 この作戦には、復讐心と冷静さの二つがないといけない。

 どちらかを失ってしまえば、宮殿深部まで辿り着くことはできないだろう。


 敵を排除する復讐心。

 状況に合わせて進軍する冷静さ。


 魔王として、俺はその二つを持ち合わせていないといけない。


 さあ、作戦開始だ。

 相手には覚悟してもらおう。


 ルフェリア城下アルギア召喚宮殿、俺は全力を以って、その深部にあるという再召喚宝物を奪い取る。

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