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27. 魔術師という存在

 峡谷村の長を名乗る少女、レアナ・オルビーク。

 

 彼女は階段を上った先にある祭壇の前で仁王立ちし、腕を組んでお怒りだった。だが、こちらはまだどういうことかわかっていない。


 え、こんなに小っちゃい子が長? まだ見た目十歳くらいである。


「あの、冗談言ってます?」


「冗談なんかじゃないぞ! わらわは正真正銘、この村の長じゃ! む~~~あたまにきた~~~、成敗してくれる!」


 彼女はぴょんと階段に飛び移ると、三十段ほどある階段を一気に駆け下りて、俺の前まで走ってきた。


「はあはあ……お前、わらわを……はあ……侮辱……はあはあ……したな!」


「とりあえず、落ち着けよ。お前……完全に息上がってるじゃないか」


「わらわは長じゃからな。この村からは基本的に出ない。だから、運動不足なんじゃよ……はあ……」


 両膝に手をついて、完全にバテているレアナは、やはりどこからどう見ても子供だ。


 身長は俺の胸の辺りまでもないし、髪型も子供っぽいツインテール。ぱっちりとした大きな瞳は愛らしくて素敵だが、顔立ちはまだまだ幼く、どこからどう見ても長の要素はない。


「お主、わらわは子供だから、長にふさわしくないのではないか? と思っておるな」


「うん、まさにその通り」


「うが~~~~~!! わらわはこの隠れ村の本当の長じゃ! この場所に年功序列という概念はない。わらわが長の地位についているのは、魔術適性が一番優れていたからなのじゃ!」


「あー、それで少しでも威厳を出すためにそんな変な口調なのか」


「これは元からじゃ~~~~~~ッ!!」


 レアナ、激ギレ。


 ついつい遊び過ぎた俺も悪い。別に彼女が長であることを信じていないわけではない。

 先ほどから、俺の傍らに立っている『地獄骸』とアリカの目つきが変わっていた。

 目の前の少女から、何か特別な気配のようなものを感じとって警戒しているらしい。


『地獄骸』たちが何かを感じているのなら、彼女は本当にこの場所の長なのだろう。ちなみに、レーナは全く何も感じていないようで、ただただレアナの愛らしさに感動していた。


「魔術適性……ということは、レアナさんは魔術師なのですね」


 切り出したのは、アリカだった。レアナは満足げにうんうん、と頷く。


 この世界に来てモンスターや召喚術師にはあったが、魔術師という存在に出会うのは初めてだった。一見すると、普通の人間と何も変わらない。

 

 すると、俺が疑いの目で見ていることに気づいたのか、レアナはジト目になって視線を返してくる。


「いまいち、お前は信じていないようじゃな。よろしい。なら、わらわの力をほんのちょっとだけ見せてやる!」


 彼女は右手を天に向けて掲げた。

 大きく一度、指をパチンと鳴らす。


 その瞬間、この村中を照らしていた天井、地面、側壁、全てに設置された燭台の火が落ちた。


 闇が全てを覆い、視界を完全に奪われる。


「なっ――!? この村の火って……全部お前がつけてたのかよ!!」


「ふん、これでわかったろう。わらわの崇高な魔術の才能を!」


 俺が驚嘆の声を上げると、レアナはご満悦で再び火をつける。


「だから、わらわは長として慕われ、この村の人間たちはわらわを崇めるのじゃ!」


 レアナがそう言い切った後、村のあちこちからいくつも悲鳴が上がる。


「うわああああああっ!! 俺が大事にしてた壷がっ!! 誰だよ、予告もなく、火を消したやつ!! こんなことする奴は、クソ野郎に違いねえ!!」


「ぎゃああああああっ!! 火が消えたせいで、転んじゃったよ!! こんなことするなんて、絶対、性格悪い人に違いない!!」


 ……全て、いきなり火を消した人間への怒りと罵倒だった。


「非難轟々だけど……」


「う、うるさいっ」


 羞恥で真っ赤に顔を染めるレアナは、とっても可愛かった。なので、頭を撫でてみる。


「よーし、よし」


「撫でるなっ!」


 なんだかこの世界に来てから、美少女に合う確率が高いぞ?

 しかし、全員もれなくバカである……。

 それだけが惜しかった。


「か、可愛いですぅ……」


 俺がわしゃわしゃとレアナの頭部を撫でていると、それに抵抗する彼女の姿を見て、レーナが笑顔を浮かべていた。


「ほい、あげる」


「え、いいんですか!?」


 レーナも撫でたそうだったので、俺はレアナを渡してやる。

 すると、レーナはすぐに抱きつき、その大きな胸をレアナの顔にぎゅうぎゅうと押しつける。


「むぎゅ! うぅ……やわら……かい……」


 レーナの柔らかいらしい胸の中で、レアナは静かにがくっと項垂れた。単に圧迫されたのか、あまりの大きさにショックを受けたのかはわからない。レアナはこれからが成長期なので、まだショックを受ける必要などないように思うが。


「ほらほら~、もっと甘えてもいいんですよ~」


「やわ………ら…か……」


 そろそろ、レーナとレアナを引き離してやろう、と近づいていった俺はなんだか二人の名前似てるな、とかそんな適当なことをふと思った。

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